Amazon kindleで10月8日まで1巻が無料。全3巻とサクッと読める漫画です。
帰宅時にちょっと暇つぶしに読むか、1巻タダだし…と読み始めたら何これ超おもしろい。
舞台は東京のレンタルビデオ屋。
東京のレンタルビデオ屋を舞台に、映画に生活の全てを費やし、他のバイト仲間から「(恋愛対象)圏外」と遠ざけられる映画オタク白川さんと、そんな彼女に報われない片思いをしちゃう新人バイト伊賀くんの「全然フラグが立たないラブストーリー」。
伊賀くんは基本的にはイケメン寄りで、リア充バイト仲間たちからも「こちら側の人間」として扱われていますが、白川さんと仲良くなるために食事に誘い、映画に誘い、話を合わせるために見始めた映画に自らものめりこんでいくなど、アプローチは実に等身大で一途。嫉妬対象としてはありえないだろう対象に嫉妬してみたり、リア充サイドから距離を置き、却って白川さんを悪目立ちさせてしまうなど、片思いならではのやらかしなども見せてくれます。
一方の白川さんは、完全に映画オタクとしての我道を貫き通し、社会に一切執着しません。リア充なバイト仲間たちから遠ざけられていることも一切気にせず、むしろそれをらくだと感じるほど。バイト代は全て映画館系に費やし髪は伸び放題、化粧っ気もなし。地方の映画祭やDVDボックスに投資するためなら食費をギリギリで抑えることも厭わない。
擦り寄る伊賀くんを遠ざけるために嫌がらせを仕掛け…るのかとおもいきやそれすらしなかったり、駆け引きが面倒なので一発ヤらせてしまおうと自宅に招いてしまったり、それが未遂に終わるも以後も気まずさのかけらも見せないなど、とにかくひたすらにラブストーリーとしてのフラグが立ちません。箸にも棒にもかかりません。
しかし、心底イタい人というわけでも、コミュ障というわけでも、ツンデレでも、ヤンデレというわけでもなく、完全に「リソースを割く気がない」「他人に一切の期待をしない」という巨大な壁を築いた、そんな女子。
こんなに難攻不落なラブストーリー、見たことない。
メインのラブストーリーのヘンテコさに圧倒的にヤられますが、ごく普通の片思い男子伊賀くんと、恋愛や生活よりも趣味を取るオタク女子白川さんらのキャラクターの描き方はとても秀逸で、どちらのポジションに立ってもグッとくるものがあります。
またメインキャラクター以外の描写も見事です。
主人公伊賀くんサイドの友達宍戸くんは、軽薄に見えてその実白川さんの心の闇に気付きつつ、それを直接言うでもなく非常に心地よい距離感で伊賀くんをサポートする超ナイスガイ。白川さん側の友達小島さんは、白川さんと同じように「圏外」の人間ながら、友人白川さんにまともな人間付き合いをさせるために、全力で伊賀くんを援護。全力過ぎて空回りつつも彼女もまた魅力的。
さらに、白川さんらを「圏外」扱いするリア充側バイト仲間たちも、白川さん以上に絵柄が華やかで「なるほど実際モテそうだし、なんで伊賀くんはこっちに傾かないんだコレ?」とつい思わせてしまうところがグー。数度「白川さんとりあえずいいから、こっちの女子掘り下げてくれよ」とか思いましたが、そんな他人の目線からも見れてしまうくらい、フラグレスっぷりが効いてます。
3巻という短い巻数ですが、そのほとんどが伊賀くんの愚直な特攻。
あぁ、これぞ片思い。「片思いってステキだなんて遠ざかってから言えるもの」なんて言い回しもありますが、本作はまさしく「絶賛片思いの最中」を思い出させてくれる、泥沼の中でひたすらもがくような苦しさを感じさせてくれました。
あがいてもがいて真っ暗闇を突き進んで、最後の最後に光が見えるものの、やっぱり白川さんは白川さん。
ほとんどの漫画が持っている「都合の良さ」や「続けるためのご褒美」がなくても、こんなに面白い作品が作れるんですねぇ。
あと、映画オタクの漫画ということで、古今東西の映画コネタがふんだんに含まれている点も短い連載ながら満足度が高いポイントです。
これはいい。読むべき。とりあえず無料なんで1巻読むべき。