書こうとしている話が一向にまとまらないのですが、それとは別方向で気になった話が。
著者と読者を不幸にする有料メルマガという仕組み 珍しくイケダハヤト師に同情する
「休刊・廃刊メルマガ特集」を自分で紹介する
2012年から始まった有料メルマガ見直しの流れは、「10年間全くビジネスモデルが変わっていないのになぜか『コレは儲かる』論として広まり、乗せられて発行したものの鳴かず飛ばずで脱落者続出」という流れをたどり、その(有料メルマガとしては3度目くらいの)「ブーム」の終わりを迎えようとしています。
今回の有料メルマガブームの序盤、散々焚き付けた者として軽く振り返っておきたいなと思います。
※注:ブログ主はかれこれ10年有料メルマガを眺めているので「メルマガブームが終わる」と言っても、有料メルマガが全てだめになる、という話ではなく、「粛々と続いている有料メルマガが、一時的に騒がれ実態以上に持ち上げられた流れが終わる」という意味合いであることを理解いただければ幸いです。
■圧倒的な告知不足
いくばくかの成功者を除けば継続に十分な読者を集められていないという状況が発生し、2013年は多くの廃刊が見られました。
渡辺文重さんが廃刊メルマガをまとめられていますが、この中でも特に著名芸能人を集めて鳴り物入りで登場した「Magalry」の失敗は、諸々の廃刊ラッシュを象徴する出来事と言えるでしょう。
Magalryが起用した芸能人は問答無用に著名であり、彼らが何かをすればその話題はニュースになり、多くの媒体で取り上げられます。しかし彼らが有料メルマガを配信しているという情報は、よほど当人を追いかけていないと手に入れられるものではありませんでした。「リアル知名度とは異なるネット知名度」の話は折に触れてしていますが、Magalryが「リアル知名度をネット知名度に転換する」仕組みを備えなかった事、配信スタンドとして積極的な露出をしなかった事、芸能人自らに積極的な誘導をかけさせられなかったことなどで、台無しになったものと見受けられます。
一方で、ネット著名人らの苦戦ぶりも、「結果、積極的に有料メルマガを告知できなかった」という点でほとんどが片付けられてしまいます。クローズドな情報を提供するとわかっているのだから、せめても常に入口を用意しておく必要がありますが、十分な告知をせずに終わってしまったメルマガが少なくありませんでした。
また、「Twitterなどで執拗に告知をするとフォロワーにネガティブに受け取られるかもしれないから」という様子も見受けられますが、このような控え方は自身の有料メルマガを自ら「ネガティブなもの」と位置付けることにもなり本末転倒ではないでしょうか。
著名人などのポテンシャルが高い発行者にしてもそうなのですから、想定される限界読者数の少ない発行者が告知を怠ったなら…それはもう悲劇でしかありません。
「Twitterやブログなどをざっくり追っていたのに、その方が有料メルマガを配信している事を有料メルマガヲチャーのraf00が気付けなかった」という事例すらあり、なんというか「売れない」じゃなくて「売らない」まま終わったなぁと感じられます。
常見さんは「著者と読者を不幸にする」と題されていましたが、「執筆にも告知にもパワーをかけない媒体を作った」というだけで、「著者を不幸にした」わけではないと思いますよ。
とはいえ、有料メルマガ界隈が(あるいは現代のネット情報媒体が)抱え続けている大きな課題、「集客が完全に情報発信者まかせになっていて、配信スタンドが集客力を持たない。完全に本人のビラ配りでしか集客できない」点がこの数年でついに一歩も進まなかったこと、その突破口が見えなかったことは大変に憂慮すべき問題で、次の有料情報配信ブームが訪れる時までに、個人的な課題として考えていきたいところです。
■発行者にとっての有料メルマガの位置付け
しばしば成功例として挙げられる津田・堀江・やまもと・藤沢氏らですが、彼らの成功要因として「無料情報や他メディアへの露出がある中で有料メルマガの役割がきちんと存在する」ことは今回一連のブームの中できちんと分析されきらなかったなと感じます。
つまり、特にこの数年有力な発信者はブログやソーシャルで情報を発信し、情報メディアに寄稿し、あるいは書籍を執筆するなど、非常に広範囲な活動をしていますが、こうした露出の中で「有料メルマガを読ませる」ことの意味付けができているかどうか、そうしたスタンスを持てる有料メルマガの内容か、有料メルマガに誘導できる活動になっているか、という流れについて。
例えば津田さんならば「様々な取材報告の中心点にメルマガが存在し、取材から得た知見を小出しにする場としてTwitterや他メディアが存在する」ようなポジションになっていますし、やまもといちろうさんも「表で出ている様々な話題のより深い内情をメルマガで得られる」という、メルマガ戦略としてはどストレートな形となっています。堀江さんは「Q&A」が有名ですが、これも「他のメディアでは親身な対応が求められない中で、唯一直接コミュニケーションできる」という点が大きな価値を生んでいます。
メルマガ戦略で「Q&Aは必須のコンテンツ」というのは定説になっていますが、ただ「コンテンツとしてこれがあれば売れる」というものではありません。ここだけの価値、購読料を払うだけの特別さを出せなければ意味がありません。
このあたり、ネットに最適化しサービス精神旺盛すぎる情報発信者(例えば常見さんなど)は無料情報でも手を抜かない分、有料情報との差異化に苦心苦心したでしょう。
イケハヤ師やミッフィーなどの「チラ裏のメモレベルの情報ですら必死」な手合いはより「有料情報にする素材のなさ」に苦戦すると思いますが、彼らのことはどうでもいいや。
無料コンテンツの分野でも、ソーシャル/ブログ/情報メディア/CGMなどごとの発信の好ましい形はまだまだこれから模索すべきですが、有料コンテンツについて真剣に考察する機会というのは(書き手たちに待望される度合いとは比べ物にならないほど)少ないので、もう少し様々な形を見てみたかったな……と思ったりします。
■今回のブームでの学び
つーか、サブスクリプションモデルのビジネスに手を出すってのは数取れなかったときに地獄だってことがあまりにも明白なので、十分な見込みと覚悟もなく突っ込んでしくじることに不幸もクソも…と思わんでもないですが。
この点では有料サロンなどは「継続的にコンテンツを発信しなくても本人のバリューだけで価値を示せる」部分があるので、ごく少数を回すには向いているかもしれません。あとネット著名人で肩書きも十分にあるのであれば、「月1回の講義と、月2回のメール相談、飲み会(飲食代別)で3000円」くらいの私塾を開いた方がなんとなく満足度が高いのかもしれません。そうした私塾モデルが活況で地方在住者からの要望が大きかった場合に有料メルマガを改めて検討する、という選択肢だってアリアリです。まぁ「有料コンテンツ」とは全然違う話になるので個人的興味の外ですが。
当初から「いささか古びている過渡期的手段」という注釈のついた有料メルマガブームですが、今回のブームを通じて、「次の流れ」が結果見えてこなかったことが、最も憂慮すべきことなのかもしれません。有料メルマガブームからほどなく、電子書籍の本格的な普及が始まりましたが、黎明期の話題に乗って売れたいくつかの事例を除けば現在の有料メルマガと同等、あるいはそれ以上にタフな媒体になりそうですし。
『ところが最近は、マスコミであれブロガーであれ、「知らないこと」を「知らないなりに書く」ことが当然の風潮になっている。』という言葉は先日片岡英彦氏がイケダハヤト宛のブログエントリで書かれた名言ですが、このような適当なお座敷記事の方が稼げてしまう流れは年々加速しており、骨太な記事が継続的な収益を(金額の多寡はさておくとしても)生み出す流れはやはり必要です。どうにかならんかなぁ。
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