12月29日、7度のワールドチャンピオンで、昨年F1から引退したミハエル・シューマッハーがフランスのメリベルでスキー中に頭を強く打ち、重体となっています。
事故直後は意識もあり非常な興奮状態だったそうですが、病院についた時には意識はなく、頭部外傷を受けており、迅速な神経外科的治療を要する昏睡状態で、30日日本時間午後17時時点で危篤状態にあります。
F1のあらゆる記録を塗替え、向こう50年は打ち破れない…できれば打ち破るような展開になってほしくないほどの強さを見せた偉大なドライバー、ミハエルに生還してほしいと、後遺症が残ろうともまだ天に召されてしまってほしくないと、強く強く願っています。
思えば彼のデビューからF1を見始めた世代で、自分にとってのF1はミハエル・シューマッハーの歴史でもありましたが、ジョーダンからベネトンに急な移籍をしたあの時から、ミハエルのことは憎らしくて憎らしくて仕方ありませんでした。
敬愛するアイルトン・セナに楯突く顎の長い生意気な若造であった時代、セナ亡き後の混迷の時代、フェラーリが完全な体制を築いて10年近くチャンピオンシップを支配した時代まで、思えばずっとミハエルを倒すドライバーが現れることを願い、そうしてF1を眺め続けていました。
圧倒的に速く、強く、タフでありながら、それを遥かに超えて勝利に対して貪欲であったこと。間違いなく全F1の歴史の中で最高の強さを持ちながらそれに飽きたらずチーム体制も完全なものとし、それでも追い抜く者があればどんな手段を用いてもそれを阻害する。
それでいて感情豊かでチャーミングでもあり、強すぎるだけにこれがまた憎らしい。
そんなミハエルがぐっと好きになれたのは、若手だったフェルナンド・アロンソが現れてからでした。ミハエル老いたりとフェラーリを蹴散らしていく(それもかつてミハエルが所属していたベネトンの経由、ルノーで)若造に対して後塵を拝するかつての皇帝を見た時に、ようやく彼を「F1をつまらなくさせるほど強い化物」から「愛すべき1ドライバー」として見ることができるようになったと感じています。
そして、個人的にはスポーツ選手たちが最盛期を過ぎて衰えていく中で、それでもしがみついていく姿、終わったと言われながらそれでも本当に燃え尽きるまで戦い抜く姿が大好きなのですが、ミハエルは引退後にF1にカムバックし、ドライバーとしての全てを見せてくれました。
昨年、全てを出し尽くして本当の引退をしましたが、しかしミハエル・シューマッハーのF1が終わったとは思っていません。フェラーリの一員として復帰するか、あるいはニキ・ラウダのようにF1全体のアドバイザーとして戻ってくるか。カメラを前に笑顔で手を振る顎の長い爺の姿を待ち望んでやみません。
正直、各メディアから報じられている彼の現状は芳しいものではありません。
このあと19時から記者会見が行われる予定ですが、最善のコメントはおそらく出てこないでしょう。
それでも、彼の意識が回復し、いつかまたF1の放送に戻ってくることを祈っています。
「頭部に大きなダメージ」「ヘリコプターで搬送」「病院で医者が会見」…。
それは20年前のゴールデンウィークの夜中に出会ったことのあるシチュエーションです。これが繰り返されてほしくはありません。繰り返されるようなことがあってはなりません。
あぁ、それにしてもミハエル、馬鹿野郎。バイクレースで頭蓋骨骨折し、サッカーでレース前に左足負傷し、今度はスキー……趣味の全部で怪我してるじゃないか。
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