2013年F1GP総括 - ベッテル圧勝

Formura1
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今年もF1グランプリ全シーズンが終了したのでまとめ。
これまで21シーズンのグランプリを見てきて、1992年やフェラーリ帝国時代といった独壇場の展開も少なくはなかったのですが、今年ほど「一切の緊張感なくワールドチャンピオンが決定した」シーズンはなかったのではないでしょうか。正直なところを申せば、「決勝放送の終盤で寝てしまい、でも録画を見返さない」というこれまでで初めての行為をしてしまうほど退屈な展開でありました。

来年はエンジン規定がダイナミックに変更され、また再来年はホンダがカムバックします。来年の展開に期待しつつ、今年を終わりましょう。
なおこのブログも100エントリ目になりました。200、300と続きたい。

■2013年 ドライバーズチャンピオンシップ

数多くの優勝者が生まれ激しい競い合いが行われた2012年シーズンから基本的には大きな規約変更がなく、成熟した開発によって強弱が分かれるだろうと見られた2013年シーズン。序盤戦こそ4チームが入り乱れたが、中盤以降はレッドブルのセバスチャン・ベッテルが完璧な走りを見せ、最終的にはシーズン13勝、後半戦9戦全勝という圧倒的なシーズンとなった。
今シーズンにベッテルが記録したシーズン13勝は2004年のミハエル・シューマッハーと並ぶ歴代最多記録、9連勝は52~53年にかけてアルベルト・アスカリが記録した連勝最多記録に並んでおり、4連続ドライバーズタイトル獲得はファン・マヌエル・ファンジオ、ミハエル・シューマッハーと並ぶ大記録である。
ベッテルのシーズンポイント合計は397。2位アロンソに対して155点差。この差は(ポイントシステムの変遷があるが比率で見て)過去にワンサイドゲームになった1992年マンセル・2002年/2004年のシューマッハーが2位につけた点差に比べれば少ない。これらの時代と比べリタイヤ率が低下したことと、アロンソ・ハミルトン・ロズベルグ・ウェバーらが安定してポイントを積み重ねていたことが影響している。

■今シーズンの事件

・ピレリタイヤ
減りすぎるタイヤで毎年さまざまな話題となるピレリタイヤだが、今年は特に多くの問題が発生した。イギリスグランプリでは数多くのマシンのタイヤが激しくバーストを起こすバースト事件を起こし、またタイヤテストにおいて後述する「テストゲート騒動」を発生させている。お騒がせの連続ではあるが、しかし信頼性が高まりすぎている現代F1にとって、ピレリタイヤの不確実性はレースに緊張感を与えていることは事実だ。

・テストゲート騒動
モナコグランプリ開催中に、直前のピレリタイヤテストでメルセデスが最新のマシンを用いてテストを行った事が話題になった。厳しいテスト規制がある中で最新マシンでの1000km走行は大きなアドバンテージに成り得る。またこの直近のグランプリで、安定性に欠けたメルセデスが開発により著しくペースを改善したこともこの一件に対する追及を深めさせた。最終的にFIA国際法廷での審議にかけられ、戒告および新人ドライバーテストへの参加見送りという軽い処罰に終わったが、今年の中でも特に大きなスキャンダルとなった。

・「マルチ21」事件
シーズン序盤のマレーシアグランプリで、レッドブルの2人がレースをリード、先行するウェバーとこれを追うベッテル両者に対し、「アタックをやめそのままの順位でクルーズしてチェッカーを受けろ」という指示が下った。しかしベッテルはこの指示を無視してウェバーを猛追、さらには抜き去ってトップでゴールするというアクシデントが発生した。このチームオーダー破りにウェバーが激怒、チーム内に激しい緊張感が生まれてしまっている。
このとき、ウェバーが無線で「マルチ21!」とおそらくチーム内の協定であろう単語を叫んだため、マルチ21事件と呼ばれている。この一件でベッテルがチーム監督からも非難されることになったのだが、2011年のイギリスグランプリでは全く逆、前を行くベッテルをウェバーがチームの警告を意図的に無視して攻め立てているので、どっちもどっちである。

・厳しい財政難
シーズン後半は各チームの厳しい財政状況が明るみに出た。「F1に参加する11チームのうち、7チームが緊縮財政下にある」「3チームは今年走り切れるかどうかすらわからない」などといった情報が上層部からの公式なコメントとして発表されている。ロシアマネーを頼るザウバー、ライコネンに1ユーロも給与を支払えず最終2戦を欠場させてしまったロータス、またフォース・インディアもヒュルケンベルグに対する給与未払いが公になるなど、状況は極めて深刻で、大きくレギュレーションが変わる来年に向け、開発の費用も負担となってくるだろう。
これにより来季の残るシートは多額のスポンサーを持ち込めるペイドライバーによって争われると見られており、巨大スポンサーを持たない小林可夢偉がF1に復帰する可能性は薄い。

・抱腹絶倒韓国グランプリ
毎年「サーキットができてない」「芝生がめくれてマシンにからみつく」「マーシャルが道を知らずベッテルがマーシャルを連れてピットに帰還」などさまざまなありえない事件を起こしている韓国グランプリだが、今年は
・セーフティーカーが入るかと思いきや、真っ先にマーシャルカーが出てドライバーたち驚愕
・コースに散らばったパーツを箒で掃くわけでもなく、端っこに寄せるだけ
・ウェバーのマシンがエンジンブロー。しかしマーシャルは近寄らずマシン全焼。
・ようやく現れたマーシャルが粉末消火器でマシンを消火、エンジンを完全にダメにする
・実況解説陣がマジ切れ
といった展開になった。なお韓国グランプリの開催権は2016年まで延長されるはずであったが、今年で終了することに。

・バーニー・エクレストンのスキャンダル
…まぁ毎年のこと。

■レッドブルチーム総括 (総獲得ポイント596)

レッドブルチームに関してはベッテルとウェバーというドライバー間で大きな隔たりがあった。
ベッテルは平均予選順位は2.1、第8戦のリタイヤを除く平均完走順位は1.6位と完全無欠。トップに立ったが最後、彼の使命は「全力で走らず、タイヤとマシンに優しく走ってゴールまで運ぶこと」になってしまう。シーズン中幾度もハイペースで走るベッテルに対して「落ち着け、ペースを落とせ」という無線が投げかけられた。まさに全盛期2002年/2004年のミハエル・シューマッハーを彷彿とさせる姿、全力で走りたがるお茶目さは残しつつ、精神的にも成熟しもはや隙はない。
対するウェバーは予選平均順位4.4位、3リタイヤを除く平均完走順位は4.5位とベッテルに対して大きく劣る結果である。今年の優勝なし、ベッテルの13勝中1-2フィニッシュは4回と少なく、ベッテルをカバーできていない。チームの不運を一身に受け、マシンが壊れる時はウェバー、ピットでミスが起こればウェバーと運もそっぽを向いてしまった。
ウェバーは今年でF1を引退、後釜にはトロ・ロッソのリチャルドが座る。大きくF1の仕組みが変わる2014年だが、ベッテルとエイドリアン・ニューウェイがいる限り、この勢いは続きそうだ。

■フェラーリ総括 (総獲得ポイント354点)

フェルナンド・アロンソの試練は続く。
序盤こそ上々の仕上がりかと思われたフェラーリだが、アロンソの平均予選順位6.2位、マッサの平均8.2位と、フロントローどころかセカンドローにもつけない厳しい一年を過ごした。
マシンに劣る中で今年もアロンソは望みうる最上の結果を残し続け、ドライバーズランキング2位を獲得。マッサは表彰台1回、平均完走順位7.1位とマシンなりの順位に終わりフェラーリを離れることになった。
来季、アロンソとライコネンという対ベッテル最強の布陣でリベンジを期する。コンストラクターズタイトルの最有力候補となることは間違いないが、しかしドライバーズチャンピオンシップではこの二人がポイントを分けあってしまいベッテルの先行を許してしまわないかという点が懸念だ。

■メルセデス総括 (総獲得ポイント360点)

一発の速さにかけては全チームの中で最も優れており、予選ポールポジション8回を記録。PPを獲得したチームはレッドブルとメルセデスだけであり、間違いなく速いチームだった。しかし序盤はタイヤを異常摩耗させる性質があり決勝で苦戦、中盤以降大きく改善はしたものの、安定した決勝ペースを獲得することができなかった。
開発にあたっては問題もあり、モナコGPの週末にピレリのタイヤテストにおいて2013年マシンでテストを行った「テストゲート騒動」が発生、最終的にFIA国際裁判所の判決により戒告が言い渡される事件が起きている。
ハミルトン・ロズベルグという体制は現役ドライバーの中では共に高いレベルであるが、近しいレベルである分バトルも頻発、争い合ってしまうシーンが多く見られた。そして二人ともに予選で速さを見せつけ、決勝で苦しみ他車に抜かれていくというフラストレーションの溜まるシーズンを過ごしている。上位チームの中では唯一現在の体制を引き継ぐことになるので、来年こそ二人が1位を競い合う姿を見たいものだ。

■ロータス総括 (総獲得ポイント315点)

直線での絶対的なスピードこそ足りないものの、際立って優れたタイヤマネジメントができるマシンで序盤の台風の目となった。
復帰後2年目のライコネンは昨年から連続入賞記録を伸ばし好調、昨年多くの衝突事故を起こし臆病な走りになったグロージャンは前半低迷した。しかし第12戦イタリアグランプリでライコネンが入賞を逃してからは状況が一変。中盤以降勢いを取り戻したグロージャンが予選でライコネンを上回る活躍を見せ、終盤戦に入ると表彰台を連発していく。ライコネンはチームの給与未払いと背中の痛みからレースに対する集中力が低下、入賞を逃してからは精彩を欠き、最終2戦を欠場した。
今年ロータスは深刻な経営難にあり、開発が思うように進まなかったことが中盤以降大きく響いている。またこのためにライコネンを失い、来季グロージャンの僚友は決定しておらず、スポンサーマネー次第であると噂されている。
グロージャンの開花は朗報だが、来季勢いを維持できるかは不明だ。

■マクラーレン総括

2013年のマクラーレンは最悪な1年を過ごした。表彰台を獲得できなかったのは1980年以降初めてで、序盤に至っては中団グループでも下位を走る有り様。シーズンが進むごとに速さを取り戻していったが、名門らしい順位は望むべくもなかった。
速さはなかったが、2台がリタイヤなく全戦完走したというのは全チームで唯一。
エースジェンソン・バトンはマシンなりの結果を出すに留まり苦戦、ザウバーから移籍したペレスは危険すぎるオーバーテイクで毎戦のようにウイングを失い、審議対象となり、他ドライバーからの批難を集めた。それでも全戦完走はしたが、たった1年でチームから放出され来季の見通しは立たない。
来季、ペレスに代わってマクラーレンに乗るのは今季フォーミュラ・ルノーのタイトルを獲得したケビン・マグヌッセン。95年にマクラーレンでデビューしたヤン・マグヌッセンの息子だ。95年もマクラーレンは不発の年だったが、2014年はどうか。

■フォース・インディア総括

2011年と同じディレスタ・スーティルの体制が復活。「序盤では苦しみ中盤以降でどんどん速くなっていく」というこのチームのパターンを覆し、序盤から仕上がりの良いマシンでシーズンに臨むも、リタイヤが頻発し決勝で苦戦、中盤戦で各チームの開発が追いついてしまい目立たない位置に留まってしまった。
復帰したスーティルの速さに注目が集まったが、予選順位平均は12と二人が並び、堅実にポイントを積み重ねていったのはディレスタで、最終的には48対29と大きな差がついている。とはいえ中段グループの中では堅実なラインナップと言える。来季はヒュルケンベルグが古巣復帰するとのニュースもあり、ドライバー力の向上に期待。
不安要素は資金難。母体の企業が極めて危険と報じられている中にある。

■ザウバー総括

昨年マシン開発の成功で多くのポイントを獲得したザウバーであったが、極度の資金不足により2013年は序盤から苦しい展開となった。しかし中盤戦からは下位チームの中でも光る早さを身につけニコ・ヒュルケンベルグがチームを先導、着実にポイントを積み重ねコンストラクターズ7位を獲得した。
ニコ・ヒュルケンベルグの起用は大成功で昨年のペレスや可夢偉らを髣髴とさせる粘りの走りを見せたが、メキシコマネーを維持するために起用したエスティバン・グティエレスは失敗。ニコの51ポイントに対し、7位入賞1回の6ポイントしか獲得できていない、フォースインディアにコンストラクターズで敗北した直接の要因と言って良いだろう。
致命的な資金難は依然続いており、来季ロシアマネーを頼りにセルゲイ・シロキトンとの契約を発表している。ただしシロキトンの戦績はフォーミュラルノーでも芳しくない。またヒュルケンベルグは今年給料の未払いがあるなど継続契約に不安を残している。ロシアマネーの適切な支払いがなければ(そしてそれは過去に何度も顕在化しているが)チームの来季が危ない。

■トロ・ロッソ総括

他チームの調子が大きく変わっていく中で、1年を通じて目立たない場所に収まってしまったのがトロ・ロッソだった。ベルニュが他車と絡む機会が非常に多く、リタイヤ数も5回と最多。
リチャルドは決勝では大きな見せ場が少なかったが、予選では年間平均10.6位とヒュルケンベルグ・バトンに次ぐ戦績を残しており、この速さがレッドブルに評価されたものと考えられる。

■ウィリアムズ総括

昨年同様、ケータハム・マルシアを除けば最も劣るマシンで2013年シーズンを過ごした。昨年デビュー年に大活躍をしたマルドナドと、今年デビューするボッタスというフレッシュなコンビだったが、チームをリードしたのは意外にもボッタスだった。マルドナドは予選でボッタスに破れ、決勝でも良いところが見せられず昨年高めた評価をすべて失い、チームを離脱することに。両ドライバーともポイント獲得1回ずつと寂しいシーズンになった。

■ケータハム/マルシア総括

マルシアが初めてケータハムよりも高い順位でシーズンを終えられた。
今年も走りきれてよかった。本当によかった。

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