2013年F1GP第1戦 オーストラリアGP

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■予選

Q1は大雨と強風により開始が30分延期されるという、いきなりのトラブルで開幕した。
めまぐるしく変わるコース状況の中、ルイス・ハミルトンやフェリペ・マッサ、ファン・デル・ガルデなどがクラッシュする波乱の展開となり、最終的にはエステバン・グティエレスがクラッシュ、コース上でマシンを止めたままQ1が終了した。
この波乱の中でマルドナドがQ1脱落、再び雨と風が強まり、コース内にマシンの破片が散乱していることから50分の延期の後、日曜午前に予選Q2がスタートすると発表された。これに伴いBSフジは予選放送の1時間枠のうち30分だけの短縮放送に、また日曜午前の予選をフジテレビNEXTで生中継することが決定した。

翌17日午前11時、Q2は前日の雨が残るウェットコンディションでスタート、Q3のアタックラップではスーパーソフトでのバトルとなった。ポールポジションはセバスチャン・ベッテル、続いてマーク・ウェバーとレッドブルがフロントローを独占、これにメルセデスのルイス・ハミルトンが続き、以下マッサ・アロンソ・ロズベルグ・ライコネンと並ぶ。

■決勝

ドライ・コンディションとなったが、レース中の雨が予想されつつのスタート。
スタート時にウェバーが遅れ6位に落ち、フェラーリ2台はハミルトンを抜いて2位、3位へ。スーパーソフトタイヤのライフが10周程度しかないことから早々にトップ集団がタイヤを交換、この中でスーティルが前方に立つ。
レースはベッテルとアロンソ、マッサによって争われるかと思われたが、2ndスティントのミディアムタイヤを長時間持たせたライコネンが台頭、アロンソとのペースを守りながら2回交換のまま走りきり開幕戦の優勝を浚った。

■レース感想

毎年セイフティカーが出るようなクラッシュが続出する開幕戦としては非常にクレバーな、安定したレース展開となった。2014年に控える大きなレギュレーション変更に備えて今年は昨年のマシンを熟成させる開発を行ったチームが多かったことが要因ではないだろうか。
安定して波乱の少ないレースではあったが、ベッテルとアロンソの戦いになると思われたところでライコネンが異次元のタイヤ活用を見せて優勝した展開は見応えがあったし、レッドブル・フェラーリ・ロータスは今年一年を期待させる良い走りをした。
予選がイレギュラーな状況で行われ、決勝でも途中で軽い雨が降るなどコンディションにばらつきがあったため、各チームの差は未だはっきりしないが、次戦マレーシアGPではさらにタイヤを使いこなせるチームが出てくることを期待したい。

■チーム別評価

・レッドブル
チャンピオンチームはフリー走行、予選と昨年同様の強さを見せたが、タイヤ作戦のミスにより決勝でその速さを結果に結びつけることができなかった。しかしシーズン前の好調ぶりそのままに各セッションでトップをキープできる実感を得たこと、また結果的に表彰台を含むダブル入賞ができたことなど、依然最強に向けては最も近い位置にいることは間違いない。

・フェラーリ
この数年間、開幕時の開発で遅れを取っていたことを考えると最高の開幕戦と言える。アロンソの2位は今回のフェラーリが取りうる最上の結果でありレッドブルに対して十分に戦えることを証明したし、フェリペ・マッサがそれをサポートできることも証明した。総合的なバランスではレッドブルに比肩する存在であり、チャンピオン奪還に向けて幸先の良い展開だ。

・ロータス
キミ・ライコネンが2ストップという奇襲により7番グリッドスタートから優勝を飾った。2013年はピレリタイヤがエンターテイメント性を増すために昨年以上にタレやすいタイヤ特性を持たせている点が各チームの課題であったが、ロータスはズバ抜けてタイヤに優しいマシンの開発に成功、確実なレースペースで一切他チームを寄せ付けなかった。
キミ・ライコネンはF1復帰以来安定した速さを獲得しており、昨年のバーレーン以降18連続ポイントを記録。次戦マレーシアGPでも同様のパフォーマンスが発揮できるなら今年の台風の目になることになる。
一方ロマン・グロージャンはスタートから中盤に沈み、ペレスとのバトルなどはあったものの目立つことなく10位1ポイントに終わっている。今年は絶対に衝突できないことから、爆発的な速さが発揮できるか、早くも黄信号が出てきた。

・マクラーレン
シーズン前テストから苦戦が予想されたが、蓋を開ければ予想よりもさらに悪い出来であった。優勝を狙っていくにはマシン開発の課題が多く、復権には少なくともヨーロッパラウンドを待つ必要がありそうだ。さらに決勝では軽い雨が降る中で迂闊にもインターミディエイトのタイヤで冒険をしさらに順位を落とすなど、作戦面でも見るべきところがない。
ジェンソン・バトンはイレギュラーな事態となった予選の中、またも巧みな天候予測を見せたが決勝では守って走り9位2ポイント。セルジオ・ペレスは予選から決勝にかけて後方に沈み勢いを見せることができなかった。

・メルセデス
シーズン前テストと予選で速さを見せ「優勝を狙えるマシン」であることを期待させたが、決勝では良いところを見せられなかった。速さを持ったマシンではあるが、タイヤに厳しいマシンである可能性が見られたのは今後に向けての懸念点と言える。
ルイス・ハミルトンは初の移籍も堂々たる走りを見せており今後に期待。ニコ・ロズベルグもルイスに負けないペースは持っているが惜しくも電気系のトラブルでリタイヤを喫した。

・フォースインディア
2013年の意外性ナンバーワン。毎年シーズン後半の追い上げに定評のあるフォース・インディアが開幕戦で速さを見せダブル入賞を果たした。エイドリアン・スーティルは後方スタートの利を活かしたミディアムタイヤでのロングランにより後半のレースをリード。1年ぶりの復帰も速さが本物であることを証明した。ポール・ディ・レスタも前を抑えられつつも安定したペースで順位を確保、今年の展開に期待が持てる結果となった。このチームの癌は親会社が経営不振であることだが、これさえ乗り切れば昨年のザウバー並の活躍が期待できる。

・ウィリアムズ
厳しい開幕戦となった。昨年活躍し今年期待のかかるパストル・マルドナドは25週目にコースオフしグラベルに阻まれてリタイヤ、新人ヴァルテッリ・ボタスはなんとか14位完走をすることができたが、マシンのペースは明らかに十分とは言えなかった。
明るい点としては今年の新人の中でボタスが最も光る人材でありそうなこと。フリー走行から予選にかけてマルドナドに並ぶ速さを見せており、この新人の開花が今年期待できる。

・ザウバー
昨年の活躍は2013年に持ち越せなかった。ニコ・ヒュンベルグは燃料系トラブルにより不出走、エステバン・グティエレスは18位スタートから粘りの走りで13位で完走した。昨年のライバル、フォース・インディアとロータスがさらに調子を上げてきたこととは対照的に厳しい一年になりそうだ。

・トロ・ロッソ
この数年、後方で地味な存在に沈んでいるトロ・ロッソだが、今年も飛躍はできなかったようだ。それでもジャン・エリック・ヴェルニュが地道な決勝12位完走ができたことは救い。ダニエル・リチャルドは残念ながらマシントラブルによりリタイヤに終わった。今年も「レッドブルかと思ったらトロ・ロッソだった」という紛らわしさで存在感をアピールしてほしい。

・マルシア
この数年の「下位の3チーム」の一つマルシア。今年も「トップ集団を悩ませる周回遅れ要因」として以外レースに関わることができないでいるが、決勝ではなんとかビアンキ・チルトンともに完走。今回予選はイレギュラーであったため103%ルールが適用されなかったが、ちょっとこのペースは厳しい。

・ケータハム
昨年の「下位3チーム」の中では比較的トロ・ロッソに追随できるレベルにまで開発を進められたチームであったが、今年はマルシア以上に厳しい状況である。ピックと新人ファン・デル・ガルデとも完走を果たしたが、このペースでは上位チームへの評価対象にはなりがたい。

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