「ヤビツは関東ヒルクライムの聖地である」
様々なサイトで、メディアで語られる神奈川県秦野市のヤビツ峠。自転車漫画でも大概登場し、関東でロードバイクを楽しむ人達なら必ず一度は耳にする場所です。
東京・神奈川からアクセスが良く、勾配・距離が「ちょうどよい」程度であり、ヒルクライム後の移動に負担がかからないことなどメリットが多く、ヒルクライマーたちのタイムトライアルポイントとして多く使われています。
raf00もその名前はかねがね聞いていましたが、とにかく坂が嫌いな埼玉県民。わざわざ神奈川西部まで行って登坂する気にはなれず、長らく放置していました。
しかし、スペシャライズドのルーベを購入し、秩父山伏峠を走ったことでテンションがアップ。じゃあ聖地行ってみっか!というわけで行ってきました。埼玉から自走で。
埼玉県川口から秦野へは80km。ヤビツ峠には午前中に登りたいので、スタートは夜中から。蛍光グリーンのウインドブレーカーに前後ライト追加とヘルメットにもテールライトを付けた完全ナイトライド装備で走り始めます。ここのところナイトライドを繰り返していて、夜の走行は慣れたもの。
東中野を越え、渋谷を越えて神奈川に向かいます。
ところで、ハロウィンとか代表戦とか、渋谷に人が群がるたびに「とんでもない量のゴミが撒き散らされている、民度が低い」と話題になりますが、若い頃によく渋谷で夜を明かしたり、今もこうして夜中3時過ぎの渋谷を自転車で走るraf00は知っています。
人気の少なくなった渋谷の道を見ればその汚れ方が日常だとわかる、と。
汚いですとにかく汚いです渋谷。
汚くてガラが悪くて眠らない街…というか眠ることから逃げたがる街、それが渋谷です。
で、渋谷の道玄坂を駆け上って246を走ります。
多摩川を越えて神奈川到着。溢れ出す地元感。そして246といえばアップダウン。車の数は極めて少ないので走りやすいのですが、秦野に向かう途中からゴリゴリ体力が奪われます。
で、秦野手前。伊勢原を過ぎ、桜坂交差点を超えたあたりからの延々上り、これが辛い。「俺……これから峠を登ろうとしてるんだよな、なんでそんなバカなことしてるんだろう……」とヒーヒー言いながら坂を登り、帰りたさがMAXになります。ようやくこの坂の終わりになる新善波トンネルに到達。
このトンネルを抜けるとちょっとしたご褒美が待っています。真正面に美しい富士山!
トンネルを超えれば秦野までは一気に下り。体力を回復させながらスタート地点までの80kmを仕上げます。途中ちょっと銭湯などにも寄って体力回復。
このカタカナ3文字、いいですなー。
80kmを走り、本日のスタート地点、名古木のセブンイレブンに到着です。このセブンイレブン、一番ロードバイク乗りに使われてるセブンなんじゃないかってくらいバイクが多いです。たっぷりでっぷりした外国人集団や、ご夫婦のロード乗り、店の前で長足でバイクをバラし、あっという間に組み上げられている異様にベテラン風味のあるおじさまなどがくつろぐ中、イキった若造が「ヤビツ?俺にかかりゃ15分だ15分!こんなんちょっとした坂だろ」と声を上げられていました。そんな彼より先にスタートしたのですが、結局最後まで彼の姿は見ませんでしたね。縮地か何かを使ったりしたのでしょうか?
で、スタート。この名古木の交差点から、ヤビツ頂上までは12km。初心者レベルでおよそ1時間、気合の入った人で40分で走り切ると言われていますが、ぶっちゃけ今のraf00であれば、1時間半で登りきることができるでしょう。「足つきなし」とか言ってられません。無理ですそんなの。休み休み走りますよそんなの。
表ヤビツ峠は序盤3分の1ほどの住宅地が最も斜度がキツく、以降はゆったりした登りに変わるという前半勝負のルート。住宅地はなるほどキツい。キツいけれど体力があるタイミングが一番辛いならまだ耐えられる…と、なんだかんだと蓑毛バス停まではインナーローで一気に走り一休み。しかし体力を使い果たしてしまったんでしょうね。3分の2ポイントである菜の花台まではズタボロです。序盤に比べれば遥かに傾斜は緩くなり、ギアを落としすぎるとフラフラするくらいなのに、とにかく足が進みません。
ロードバイクは本当にダイレクトに自分の駄目な部分を明らかにしてくれます。raf00の場合、筋肉は余力を残しているのに心肺が先に悲鳴を上げ、身体が悲鳴を上げた時の根性が一番ない。長時間の「我慢の走行」がとにかく苦手。セブンイレブンにいた太っちょ外国人グループに「ガンバレー」と応援を受けながらふらふら登り、菜の花台到着。
ここまで登ると、ようやく「自分結構登ってきたじゃない」とテンションが上がります。テンションが上がると調子の良いもので一気に進め、ここからは足つきなしで峠に到着。
結果、1時間15分。初心者レベルを下回るペースでのゴールです。
ふらふらでボロボロのヒルクライムではありますが、しかしヤビツ峠が聖地だという感覚はビシバシ伝わります。なるほどここは魅力的な峠です。
体力のあるタイミングでキツイ斜度を体感でき、その後のつづら折りはかなり緩めで貧脚なraf00でも「よし、走ろう!」と心が折れずに進めると。そして12kmという行程で、3分の1のポイント、3分の2のポイントが明確で残りの距離を推し量りやすい。
ズタボロにヤられながらも「また登りたい!」と思える峠で、たしかにこれは文句なしに聖地と呼べるでしょう。埼玉県民がよく走る山伏・正丸峠は短い割に要所で心を折ってきますが、ヤビツは坂嫌いでも楽しさがあります。
さて、登頂したらお楽しみの下りですが、スペシャライズドルーベはディスクブレーキ。せっかくだからキツい下りでブレーキ性能を試してみたいじゃないですか。
というわけで表ヤビツを引き返してきたのですが、ディスクブレーキは本当に良いものです。最大制動力は変わらないのですが、クイックに減速が効くので安心感がとにかく高い。ルーベの高い衝撃吸収性も相まって、バイクが100%信頼できる感覚で下れます。この感覚は面白すぎる。
登りも下りも面白すぎるので、ヤビツ……今度は輪行で体力全開で登ってみたいと思います。