「メルマガビジネスの現在、未来」を補足してみる。

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はい、すっかり時間が開いてしまいましたよ。ブログの時間です。
書く書くと言いながらブログを放置していた結果、kanoseさんが大変ステキな「有料メルマガ界隈に関するまとめ記事」をcakesに上げられており、これが素晴らしい有料メルマガ総まとめといった記事になっているので、すっかり重点ネタを失ってしまった感があります。

メルマガビジネスの現在、未来|加野瀬未友|ケイクスカルチャー|cakes(ケイクス)

cakesに有料メルマガの記事を寄稿しました/はてな界隈と縁が深い人のcakesの記事リンク集

非常に良い記事なので、ぜひcakesの購読申し込みをして読んでほしいと思います。購読を始めたついでに気になる記事もまとめて読んで即解除すれば150円ですから。(これだけコンテンツが充実してきたタイミングになると150円で読み逃げできてしまうのもどうかと思うのですが)

さて、メインの話としては上記記事でおさえられているので、その上で、有料コンテンツを継続してウォッチしている立ち位置からいくつかの補足をしてみたいと思います。

■メルマガを続けるとカルトになるか? 問題について
オープン・クローズ論とセットで語られる「クローズはカルトを招く」という話なのですが、これは2点のポイントからそんなことはないぞ、と申したいところであります。

まず、そもそものところで「カルト」が懸念されるようになったきっかけというのは、特定のメルマガ発行者の印象が極めて強いという ところではないでしょうか。すなわち、上○隆氏を代表とする幾人か。
オープン区画では非常に議論を呼ぶ人達であり、熱心な支持者がいる一方で、非常に強い糾弾がされるプレイヤーです。その彼らがクローズ区画に逃げ込んだ場合、糾弾を続けることが難しくなるため、彼らがメルマガという選択肢を持つことに対して警戒する向き があることはひとつ自然な流れであるとは思えます。

しかし。彼らのカルトさというのはクローズであるから発揮されるものなのでしょうか?
オープンインターネットを長年満喫している身として思うのは、「彼らはオープンなインターネット世界にあってすら、カルトだったじゃないか」というところです。
オープンなインターネットでカルトを形成するというのは、黎明期よりこちら少なからず見られる傾向です。発信はオープンな場所で行われているものの、肯定的な反応に対しては双方向性を持つものの、否定的な反応に対しては全力で背を向けなかったものとして扱う…そんな存在はたくさんいますし、ソーシャルメディアが普及する中ではさらに規模を大きくしている印象すらあります。

ある一つの成功体験をすることでその成功体験に縛られて極端に視野が狭くなりカルト的な存在に変わってしまう人も見られます。
即ち、昨年の震災時に不安にかられたユーザーに対して刺激的な情報を発信し、大きな反応が得られた人達。
彼らは当初「情報のハブ」を自称していましたが、そうした非日常での突出した感情の誘導がもたらす反応に味をしめ、地震の騒ぎが一通り落ち着いたあとも原発に河岸を変えて「危険」を煽っています。彼らにとって冷静さとは拡散力を鈍らせるもの。常に過激な情報に、過激な情報に偏り視野を狭めて行っています。その様もまたカルト化といえるでしょう。

また、有料メルマガの集客の仕組みを考えると、カルト化はメルマガ発行者にとってデメリットが大きいという点も、「カルト化」に対してやや懐疑的な要素です。
kanoseさんの記事でも「サブスクリプションモデル(月額課金)で、継続的なマネタイズの上で有利」という点について書かれていますが、それでも「毎月メルマガの収益を得続ける」というのはなかなかに難しいものです。

やや古い情報ですが、5年前の有料メルマガ市場では「新規に購読した読者のうち、50%は半年以内に購読を停止する」という状況がありました。現在は非常に強力なプレイヤーが発行者になっているため、この数値がやや動いている可能性がありますが、それでも「メルマガは一度読者を集めれば安定するというものではない」という認識が必要です。
100人の読者を維持するために、毎月一定数の集客を続ける必要があります。そして一つ現在のメルマガブーム(といいますが「ブーム」に関しては後述)の集客を支えているのは、ほぼTwitterアカウントからの集客であり、「ジャーナリストが完全に有料メルマガにこもってしまった 」場合、Twitterという集客チャネルが弱まり、カルトな王国を作る前に有料メルマガの収益が細りきってしまうことになるでしょう。
やや皮肉な話ではありますが、「クローズな有料メルマガで食っていくためには、オープンの世界の軸足を同時に強化する必要がある」というのが現状であると言えます。

また、継続的に新規の新規読者を迎える必要があるため、極端なクローズ区画でのカルト化というのはしにくい状況があると思っています。半年や1年のスパンで半分程度の読者が入れ替わる可能性があるため、継続的な深化がしにくいというのは長期間メルマガを運用する人の悩みでもあり、このあたりもカルト化が仕組みとして進みにくい要素として考えられるのではないかと思います。

■メルマガはブームなのか
堀江メルマガや津田メルマガが一年間で億を稼ぎ出す媒体となったことで、有料メルマガが語られる機会が増えています。
さらにまぐまぐや夜間飛行というスタンダードなメルマガ配信プラットフォームに加えて、ニコニコ動画がブロマガを、また新しい形としての有料コンテンツメディアであるcakesなどが相次いで登場したことで、2011年から2012年までの状況を「メルマガブーム」と呼ぶ人も増えてきました。
しかし、この「ブーム」という言葉を使うのは少し様子を見るべきだと思っています。

というのも、現在起こっているのは「コンテンツ販売に利する集客力を持つ発信者に集中的にリクルーティングが行われており、これらの発行者に強い関心を持っていた人が購読している状況」に過ぎないからです。

これは現在の有料コンテンツの集客があまりに発行者自身のWEB内での告知力に──さらに明確にいうならTwitterフォロワー数に頼られているという環境が大きいだろう、と見ています。現在有料コンテンツで多くの読者を抱えている著者はいずれもWEB上で多大な影響力を持つ人に限られており、世間的には圧倒的に知名度があるがWEBに根ざしていない著名人がかなり苦戦していることから、今後の発展に向け大きな課題であると思っています(告知に関する詳しい状況は後述します)

また、そもそも有料コンテンツで一定の稼ぎの得られる人は少ない(普通に紙媒体で本が出せるレベルが必要であると思います)のですが、ブロマガは厳しい審査が、夜間飛行やcakesは限られた著者に媒体側が参加の声かけをしているなど、結局著名でない人材がコンテンツ配信をしたいと思っても古参であるまぐまぐ以外の選択肢がないという状況もあります。

現在の動きが変わらない場合、限られた人(WEB著名人)による限られた人(そのフォロワー)への販売が行われるに留まり、今後トップクラスの発行者であっても新規購読者獲得に悩むタイミングがくるだろうと考えています。
そして、その踊り場は非常に近いところにあり、ブームと呼ぶにはまだまだ足りないだろう…というのが2012年10月現在で思うところであります。

長く有料コンテンツを眺めている者としては、より大きく継続的な文化として定着して欲しいと心から願っています。このレベルで「ブーム」と呼んでしまうのは未だ早計である、と考えたいものです。

■有料コンテンツ全体に蔓延するメディア力の不足
前項で、「集客がTwitterに限られている」と書きました。

これは有料メルマガだけでなく、電子書籍やクラウドファンディングなど広範囲に渡る、現代のWEBの大きな課題であると思っています。

個人のコンテンツを認知させるためにはその本人が自ら継続して告知を行って行く必要があり、プラットフォームがその助けとならないことは、現在のWEBの大きな問題です。

以前各プラットフォームから営業を受けまくっていたどなたかがこんな揶揄をされていました。
「有力メルマガやりませんか?基本的なノウハウは提供しないでもないですが、コンテンツは全てあなたが作ります。集客もあなたの役目です。どんどんTwitterでウチを紹介してください。そして儲かったら手数料をもらいますよ!」と言われても、それは上前かすめ取るだけじゃないかと。

非常に痛烈な一言ですが、「プラットフォームが集客に利さない」という点では現状反論が難しく、この状況が変えられない限りにおいて、「メルマガはファンクラブ」と言われる状況は変えがたいだろうと思います。
これまでもメルマガ発行者を集めた座談会などが行われてはきましたが、「メルマガっていいよね」という話に留まり、各発行者のメルマガそのものの魅力に迫れるものではなかったように見受けられます。

しかし現在、夜間飛行では有料メルマガの中でも特に秀逸なコーナーを無料掲載する働きや、ブロマガでの「各発行者が同じテーマについて語る特集」を打ち出す動き、また読み放題のcakesはその仕組みによってメディア自体の誘導力を強化しており、この課題を変えようとしています。
今夏からこの課題について急速に各プラットフォームが動きつつあることは、有料コンテンツ論をする上で重要となってくるでしょう、なってほしい、なってくれんか。

またsammy_sammy渡辺さんやHagexさんなど、発行者でない外部の人によるメルマガレビューなども行われており、この動きがさらに進んでくれると、また流れが変わるのではないかと期待しています。

というわけで、今日はこんな感じで。

 

コメント

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