2014年F1GP第4戦 中国GP

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F1の技術戦争は恐ろしいものがある。
最先端の技術争いの中で限界を極めて作成されているF1マシンだが、開幕後に発見された欠点や信頼性の不足を数週間で取り戻していくというのは一体どれだけの技術を要するのだろうか。
波乱の幕開けとなった2014年だが、早くも熟成の気配が見られる。

■予選

予選は再び雨。4戦中3戦がウェットコンディションでの予選である。
メルセデスの圧倒的優位は変わらないものの、レッドブルも速さを取り戻し上位を狙う展開となる。
ウェットとインターミディエイトの適合領域が入り乱れ、波乱が予想されたがQ1~Q3までほぼ順当にスケジュールは進んだ。
トップはハミルトン、2位リカルド、3位ベッテル、4位アロンソ。ウィリアムズが6-7番手に続き、今度こその活躍が期待される。

■決勝

スタートでロズベルグが出遅れる。マッサがロケットスタートを決めるがアロンソと接触し順位を落とす。またボッタスもロズベルグと接触し同様に順位を落とした。どちらも大きなダメージなくレースを続けている。
スタート争いでの順位はハミルトン、ベッテル、アロンソ、リカルドに。
以後のバトルは今年前3戦とは異なる、オーバーテイクではなくピット戦略で争う戦いとなった。タイヤに非常に厳しくコース上にマーブル(タイヤカス」が散乱する光景も久しぶりでオーバーテイクを難しくしている。
ハミルトンが独走を続け、セーフティーカーなどの大きな混乱も起こらずレースは進む。途中、レッドブルのベッテルがチームオーダーの無視やケータハムに抜かれたことをなじるコメントをするなどチャンピオンらしからぬ態度を見せるが、最終的には順位を譲る。またスタートに失敗したロズベルグが強烈な追い上げを見せ2位に復帰。また苦戦を強いられていたフェラーリのアロンソが完璧なレースで今年はじめての表彰台を獲得した。

なお、今回中国グランプリでは珍しいトラブルが発生している。
56周で争われるはずの中国グランプリだったが、トップハミルトンが最終周である56周目に差し掛かったところで、誤ってチェッカーフラッグが振られてしまった。
F1の競技規定第43条2項では「先頭マシンが予定周回数を終える前にレース終了の信号が何らかの理由で出された場合、レースは信号が出される前に先頭マシンがラインを超えた時に終了したものと見なす」と規定されており、つまり54周時点での結果が最終結果となる。
ポイント圏内の順位に変更はないが、なかったことにされる最終周にケータハムの小林可夢偉がマルシアのビアンキをオーバーテイクしており、17位に記録されるはずが18位が最終結果になってしまった。
これまでに見たことのない珍事であるが、2002年のブラジルグランプリではペレが特別ゲストとしてチェッカーフラッグを振ることになっていたが、トップのミハエル・シューマッハーがコントロールラインを通過したことに気付かず、数台がゴールした後にチェッカーが振られたことがある。

■レース感想

メルセデスが4戦連続の圧勝。フェラーリとレッドブルが復調の兆しを見せているが、メルセデスとの差は別カテゴリのように大きく開いている。1-2位はもはや確定的な位置におり、トラブル以外に隙がない。
しかし、各チームが一気に信頼性を取り戻してきていることで、ピットバトルが中心ながら渋みの効いた戦いが楽しめるグランプリではあった。

■チーム別評価

・メルセデス
88年シーズンのマクラーレン・ホンダを彷彿とさせる展開になってきた。
4戦終わって全予選制覇、全ファステストラップ制覇、全決勝で優勝。ハミルトンは3連勝を続けており、ロズベルグは4戦連続表彰台。1-2フィニッシュも3連続となった。
燃料も全く問題がなく、特に燃料負担の少ない中国グランプリでは少なめの燃料搭載でスタートしなおも燃料を残す。
さらにタイヤに苦労する各チームを尻目に「全然タイヤが良い感じなのだけど…」と無線でやりとりできる余裕がある。
天候もコース特性も関係なく強い。
残る見どころはハミルトンとロズベルグのドライバー争いだけ…と言い切ってしまってももはや問題なさそうだ。

・ウィリアムズ
予選順位を見る限りにおいては未だトップ4チームに入っているはずなのだが。
スタートで2台とも他車と接触して順位を落とし、マシンにダメージはなかったがペースを取り戻せず、ボッタスの7位入賞、マッサ15位完走に終わった。
ミスなく走りきれていれば2台とも高順位での入賞が間違いないマシンである事は間違いなかったが、ヨーロッパラウンド前の開幕4戦を36点で終えてしまったのは痛恨の極みだ。レッドブルとフェラーリが復調してきており、フォース・インディアが強敵として待ち構えている以上、ここからの展開は容易ではない。

・マクラーレン
マシントラブルで消えた前戦に続き、2戦連続のノーポイントに終わった。初戦の2-3位W表彰台はどこへやら、予選から精彩を欠き挽回できないままゴールを迎えてしまっている。
フォース・インディアやウィリアムズが力を持ち、トロ・ロッソも遅くない中では大きく沈んでしまう可能性がある。挽回に期待したい。

・フェラーリ
2人のチャンピオンドライバーの明暗は今や隠し難く表面化している。
アロンソは改善したフェラーリマシンを完璧に乗りこなして予選5位から決勝ではレッドブルの2台を抑えて今年初の表彰台を獲得した。
一方ライコネンは雨の予選に苦しみQ2脱落、決勝でも全く見せ場なく8位でレースを終えた。
ライコネンの不調はタイヤを上手く温めることができず、ペースを安定させられないことが原因。しかしこれはライコネンのドライビングスタイルに関わる問題であるため、一朝一夕では解決できないかもしれない。
紛れも無く天才ドライバーの一人ではあるのだが、現時点ではマッサよりも結果を残せていない。

・レッドブル
絶対的なトップスピードの不足に悩みつつもコーナーリング性能で挽回し、メルセデスに次ぐ速さを取り戻している。
ドライバー面ではリカルドの速さが際立ち、予選・決勝ともにベッテルが負けてしまっているのが印象的だ。
ベッテルはリカルドを先に行かせろというチームオーダーを1度無視し、また中盤で新タイヤを装着したケータハムの可夢偉にオーバーテイクされたことに苛立つなど、フラストレーションを溜めつつある。
状況的にはリカルドを有線せざるを得ないチームと、連続チャンピオンのプライドがあるベッテルの間に軋轢が生じることが懸念されており、このままの展開が続いてしまえばこれは現実的な問題になってきそうだ。

・ロータス
予選でグロージャンがQ3に進出するなどペースの改善が見られたが、グロージャンはギアボックストラブルでリタイヤ、予選最下位からのスタートを切ったマルドナドが14位と苦戦は続く。
マルドナドのペースはケータハムと大差なく、速いのか遅いのか未だ未知数。
0ポイントを続けており、またライコネンらへのサラリーが未だ未払であることが明らかになるなど資金不足が極まっている。
来年も参加できるのかが疑わしい。

・フォースインディア
引き続き好調のフォース・インディアは6位9位とW入賞を果たしコンストラクターズポイントを加算した。レッドブルとフェラーリと並ぶ50点台を確保しており、非常に良いパフォーマンスを見せている。
予選でもQ3を走ることができ、決勝でも安定したペースが出せているため、引き続き期待ができる。

・ザウバー
スーティルがマシントラブルでリタイヤ。グティエレスは16位完走と、マルシア・ケータハムよりも前にいるのが精一杯な状況。期待できる要素は少ない。

・トロ・ロッソ
クビアトが10位入賞し、ベルニュは12位完走だった。
ウィリアムズとフォース・インディアの躍進によりポイント獲得に至っていないが、10位前後で走れるだけの速さは持っており、年間を通して堅実にポイントを積み重ねられれば中堅の位置を確保できそうだ。

・マルシャ
最終週に小林可夢偉に抜かれたが幻のオーバーテイクとなり、ビアンキ17位、チルトン19位でケータハムに勝利した。
しかし4戦目にしてケータハムとの差が完全に埋まってしまっているように見える。チルトンは今回で23連続完走記録を更新中。

・ケータハム
新人エリクソンが「可夢偉よりも体重が重いせいで0.5秒遅くなってしまっているんだ」とコメントしたが、過去3戦は平均0.8秒遅れており、体重が同じでも負けるじゃんと各メディアで総ツッコミに合っている。萌えキャラ誕生の瞬間である。
中国グランプリでも最下位完走と速さは見えない。
可夢偉は今回も素晴らしいスタートを見せ、最終周でビアンキを追い詰めオーバーテイクに成功したが、この結果は反映されず18位完走で終わった。
中国グランプリでアップデートを反映できなかったが、次戦以降で絶望的な差がわずかでも縮まることを期待したい。

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