【F1】2014年レギュレーションについて考える

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21世紀に入ってから延々議論されてきたコスト削減とエコロジーへの対応が本格的に導入される2014年のF1レギュレーションが固まってきましたね。
来季はかなり多くのレギュレーション変更が行われるため、それぞれをきちんと理解する必要がありそうです。というわけで、今回は2014年レギュレーションについて書いてみましょう。
1990年以降のF1レギュレーション変更の経緯については以下をご覧ください。

【F1】レギュレーション変更の歴史

■マシン構造に関する変更

  • エンジンを1.6リッターV6ターボエンジンに変更
  • ドライバーがコックピット内からエンジンを始動できるよう、エンジンスターター装着を義務化
  • エネルギー回生システムの刷新。運動エネルギーだけでなく熱エネルギーも回生するシステムに変わり、現在のKERSからERSと名称も変更。出力は60kwhから120kwhに引き上げられる。1周あたり0.8秒のアシストが追加される
  • レース中に使用できる燃料を100kgに制限し、FIAがメーターで監視する
  • リアブレーキ回路の電子制御を認める。エネルギー回生中も一貫したブレーキングを行わせるため。
  • ギアボックスを7速ギアから8速ギアに変更し、シーズンを通じて使用するギアレシオを申告する。サーキットごとのギアレシオ変更はできず、シーズン中1回のみギアレシオ変更が認められる。
  • 最低重量を5kg引き上げ647kgに
  • 段差フロントノーズを廃止
  • フロントウイング幅を車幅と同じ1800mmから1650mmに変更
  • サイドインパクト構造を標準化し、安全性の強化とコスト削減を実現する

外見的には段差ノーズの廃止とフロントウイング幅を車幅よりも150mm短い165mmとする(これによりフロントウイングのエンドプレートを破損するケースが減ると良いのですが…)という小規模な変更に留まっており、とかく1.6リッターのV6ターボエンジンの導入が目立ちますが、2014年マシンは根本的に別物になる、と言っても良いくらいの変更が行われます。

まず大きなポイントはハイブリッド化。これまでは完成されたエンジンにKERSを後付けしていましたが、2014年はエネルギー回生システムを完全に組み込んだハイブリッドシステムで設計されます。
これまでのKERS(運動エネルギー回生システム)は、後車軸のブレーキング時の余剰エネルギーを一時保存し駆動輪の回転をアシストする仕組みでしたが、2014年からはターボチャージャーからもエネルギーを回収可能になります。KERS(Kinetic Energy Recovery System)が運動エネルギー(Kinetic)だけに頼らなくなったため、この単語を取っ払いERS(アーズ?イーアールエス?どっちなの?)となりました。
このエネルギー回生の力は強く最大出力は60kWhから120kWhと倍に引き上げられ、最大放出量も10倍になります。現在1周あたり約6.8秒の放出であったところが8.6秒に増加し、レースの展開をより大きく変えることになるかもしれません。
この新システムの搭載により、ピット走行時はエンジンを停止しERSの電気モーターのみで走行する規約が追加される予定でしたが、これは2015年以降に延期されています。

V6ターボエンジンとERSの導入により、さらに多くの技術規定が改定されています。
まず面白いのは「エンジンスターター装着を義務とし、ドライバーがコックピット内からエンジンを始動できるようになった」という点。これはおそらくピット内ERS走行に伴って導入されたのだと考えられますが、これまで「エンジンはピットスタッフが起動するもの」で、コース内でエンジンが止まる=リタイヤを意味していましたが、エンジン再スタートができるようになるのでしょうか?
また、ERS導入によってブレーキング時に車体制御が不安定になることが予想されるため、リアブレーキの電子制御が許可されています。F1にとっては久々のブレーキアシストの解禁ですね。

そして大きな変更が並んでいる中では地味に見えますが、「1レースに使える燃料を100kgに変更」というのは実は凄い変更です。というのも現在のF1では大体1レースで150kgの燃料を使用しているので、同じレース距離で燃料消費量を3分の2にしなければなりません。我々がレースを観戦する上ではあまり大きな要素にはならないかもしれませんが、F1という技術競争においてエコロジーに大きく舵を切った象徴的な規則として認識できるでしょう。

そして、マシンに関する大きな変更はパワーユニットに留まりません。
ギアボックスの規則変更は2014年のF1シリーズを大きく左右する内容となっています。
これまでは7速ギアのギアボックスをレースごとにギア比を変えてサーキットごとに最適化していましたが、2014年は8速ギアでギア比の変更ができなくなります。シーズン中1回の変更は認められますが、それでも1回のみ。つまり高速サーキットとストップアンドゴーのサーキットで同じギア比で走らなくてはなりません。
これによって、チームごとに得意不得意なサーキットが発生する可能性があり、特にこのルールが適用される2014年シーズンは好不調がはっきり出てくると予想できます。

V8エンジンがなくなることで、特徴的なエンジンサウンドが聞けなくなるのは寂しい事ですが、数多くの技術的チャレンジが行われる2014年シーズン、混乱した展開を期待できると思います。

■開発関連の規定変更

  • エンジンなどパワーユニットは2014年から2020年にかけて1種類のみ登録可能。信頼性とコスト削減に関する変更のみ許可される
  • シーズン中テストと開発の変更。シーズン中に2日間のテストを4回、ヨーロッパのサーキットでレース後の火曜水曜に実施できる。
  • コスト削減のため風洞とCFDでの作業時間を大幅に削減。複数チームによる風洞の共有を認める
  • タイヤテストと開幕前テスト。12月に新車を使ったピレリタイヤのテストと、新パワーユニット導入に伴い2014年からテストが実施できる

開発に関しては毎年行われているコスト削減のための合理化がより推し進められます。
エンジンなどのパワーユニットは2014年シーズンに開発したものを2020年まで使い続ける事が定められます。また、今年まで強烈に制限されていた開発テストは緩和され、シーズン中に2日間のテストを4回まで認められることになりました。レース開催後そのサーキットでのみテストが行えるようにすることで、輸送費などを節約できる合理的な仕組みとなっています。

■競技に関する変更

  • シーズンを通じて使用できるパワーユニットは5ユニットまで
  • 1シーズンに使用できるギアボックスは現在の5基から6基に変更
  • フリー走行1回目でタイヤを1セット追加。タイヤ消耗を気にせずテストさせるため、金曜フリー走行でのみ利用できるタイヤを追加する
  • ペナルティポイント制度の導入。コース上でのルール違反に対し1~3ポイントを加算し、累積12ポイントに達すると次戦出場停止。ポイントは12ヶ月間有効
  • 5秒ペナルティの追加。軽微な違反に対し、完走結果に5秒を追加するペナルティを導入する
  • シーズン最終戦ポイント制度の変更。シーズン最終戦のドライバーズ・コンストラクターズポイントはそれまでの倍、優勝50点、2位36点、以下10位まで通常の2倍のポイントが与えられる。
  • カーナンバーを世界チャンピオンの「1」以外、ドライバーごとの固定ナンバーにする案を検討

競技に関しても大きな変更が行われます。
1シーズンに利用できるパーツ数に調整が行われ、エンジンの規定がさらに厳しくなっています。
タイヤに関しては2013年シーズンに多くのチームでタイヤの温存が行われてしまった事を受け、フリー走行1回目の30分でのみ使用できるタイヤを1セット追加し、消耗に余裕を持たせる事になりました。

今年レッドブルがあまりにも大差で圧勝し終盤非常にダレた展開になった事を受け、ポイントシステムも変更されます。
シーズン最終戦のみドライバーズ・コンストラクターズポイントが通常の倍になるという最終戦ダブルポイントシステムを導入、これにより1位が一気に50ポイントを獲得し2位に対し14点差をつけることになるので、チャンピオンシップの決定が最終戦近くまで持ち越される事になります。
また、1位争い以上に中堅下位チームにとってこのポイントは重要です。最終戦1戦だけでコンストラクターズの順位が大きく変わってしまう可能性があるため、最後まで開発競争を捨てられなくなることが予想されます。下位チームは数ポイント差での争いが行われているため、大逆転が見られるかもしれません。

また、ペナルティ周りの規則も追加が行われました。連続して違反をする危険なドライバーに対して累積型のペナルティポイントを課し、累積12点になると次戦出場停止となるもので、この規則で今年のシーズンを考えると多分ペレスが出場停止になったことでしょう。次戦出場停止のルールはこれまで曖昧であったため、歓迎してよいルールです。

カーナンバー固定制は古き良き時代の文化を引っ張り出してきたもの。ナイジェル・マンセルのレッドファイブやジル・ヴィルヌーブの27番が再現できるルールですが、古参的には「ドライバーだけじゃなくてチームにも固定ナンバーを。ティレルの3・4番とか!」って思わないでもないです。っていうか、固定ナンバーが様になる印象的過ぎるドライバーが居並ぶ時代でもないので、イマイチインパクトを感じないような気も。

■2014年の展望

というわけで大きな規約変更が数々盛り込まれ混乱と膠着化の両側面を持ちそうな2014年シーズンになりそうです。来季に向けての開発競争で「劇的な序列の入れ替わり」は発生しないというのが多くの専門家たちの予想で、確かに大規模開発を伴うため予算の多い強豪がやはり有利であろうというのは想像に難くないところ。
ポイント制度の改定によりチャンピオン決定のタイミングは後倒しされていますが、「故障やリタイヤが際立って少なくなっている」「開催レースが多く強弱がはっきり出やすい」という近年の傾向をさらに強めるレギュレーションとなっており、1強が飛び抜けると今年同様の展開に陥ってしまいそうです。
また近年「追いかけるDRSと逃げるKERS」という使い方がされていましたが、ERSになることでより防御面が強化され、追い抜きが難しくなる展開も考えられます。
2012年のような激しいチャンピオンシップになるのか、2013年のような強さがはっきり出る戦いになるのか、開幕を期待したいと思います。

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