電子書籍サービス kindle(AllAboutの大量出版) ~ WEBサービスの今についてあれこれ

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さてさて、先日3つのサービスを紹介した「WEBサービスの中間報告」の続きを書きたいと思いますよ。
Amazonの電子書籍サービスKindleでちょうど一つの話題が盛り上がっているのでそれに絡めて。

All Aboutが『All About Books』として、サイト内の既存記事を1記事1冊の電子書籍としてAmazon Kindleで販売し始めたようです。

All Aboutが1ヶ月で6500冊の電子書籍を投入してきてるのってどうなのよ? | 電明書房

楽天koboでもwikipedia記事を「1冊」として取扱数を水増しするという事例がありましたが、今回はAmazon自身ではなく電子書籍ダイレクト出版サービス、KindleDirectPublishingを利用したAll About側が問題視されています。
この件に関してコメントを眺めてみると、曰く悪質な行為である、ゴミ溜めである、超薄利多売のゴミみたいな本であふれてしまう……などなどと散々な言われようです。
実際、現在のkindleの書籍店数からするとこの大量投入は大きなインパクトがありますし、影響は確実に出るでしょう。あとWEBだからいいけど雑誌とかであれらが書かれていたらブチ切れるな…と思う記事もあの媒体には多いので、絶対に買わないと思いますが。

しかし。
これって電子書籍がこの1年急速に進展する前段階で、電子書籍に夢を抱いていた人たちが語っていた「無責任な未来と願望」がそのまま表れたものであると言えます。つまり当時抱かれていた「雑誌を記事単位で買えたらいいのに!」といった願望や、「ブログを本にして売れる!」といった要望がそのまま実現するとこうなりますよ、という。
この「書籍検索の機能不全」は、電子書籍が普及することで必ず行きつく課題でありましたし、電子自費出版が組み込まれると爆発的にこれが膨らむことはかねてより課題であり、これが日本でも発生したよねという話でしかありません。
既にアメリカのKindleではこの状況が明確に表れていますし、問題にもなっています。「ベストセラー作品に似通った名前にして目に触れさせる」「検索数の多いワードをタイトルとして販売する」といった、さらに進んだ負の方向の取り組みも行われているようです。

今回この件によってAll Aboutが大いに叩かれていますが、しかしこの方向性は既定路線であり、ここから先の展開、さらに書籍が増え、多様な売り方が考案され、検索への対策が取られるであろうことを考えれば、今回の一件などは絶望するにあたらない、と考えます。
日々の新刊チェックに辟易しているという意見がありましたが、例えAll Aboutが手を出さずとも「低品質な個人の書籍が増えすぎてどうにもならなくなる」という未来はすぐそこであったでしょう。
現在Kindleでは続巻やシリーズなどへのリンク情報が設定できませんが、こうした機能が実装された場合、kindle検索対策として「メインの書籍を買わせるために検索表示数の多いタイトルを付けたダミー書籍をシリーズとして発行し、主力の書籍に誘導する」などの施策が取られるであろうことも想像に難くありません。今後、さらに電子書籍はWEB化していき、Kindleという一つの仕組みだけではどうにもならなくなるでしょう。

で。
ではどう受け止めて、どう先を考えるべきかというところですが。
まずkindleを「一つの売り場」と考えること自体に、近々無理が生じてくるでしょう。あまりに点数が多く、あまりに多くの新刊が発行され、ノイズはさらに増え、「何が望むもので何が望まないものなのか」の区別がつかなくなっていくでしょう。
また、紙書籍は書店が有力な紹介機能を備えていましたが、Amazonサイト単体ではどうしたって「平積みで紹介できる枠数が足りな過ぎる」という課題もあります。
よって、kindleは「電子書籍倉庫」であると考え、アソシエイトを利用した個人やAmazon以外の企業がセレクトショップ的なサイトを打ち立てていく未来を考えていきたいところです。あるいはチャンスと考えていくべきなのだと思います。

実際、All About BOOKsが参入する前の、「まだまだ書籍点数としては物足りない」と感じられる段階ですら検索から書籍探しをするのは超困難であるので、Kindleに何かを求めるのは難しいでしょう。まして低品質な書籍はAmazonがフィルタリングしろと迫るのも土台無茶な話ではあります。「電子書籍そのものを作る」というのもエキサイティングですが、「よくわからんことになっている電子書籍の流通をビシッと整理する」という取り組みはこれまたエキサイティングだと思いますよ。

とまぁ興味深い話題があったわけですが、昨年のAmazon電子書籍サービス開始から1年足らずでここまで電子書籍普及による懸念が顕在化したことに関しては「思いのほか順調に展開した」と感じられてなりません。パピレスやebookjapanの初期展開からかれこれ10年以上が経過していますが、ごく自然に選択肢として電子書籍が挙げられるようになってきたことで、ついにようやくやっとこさ「電子書籍元年」が到来したなと感じています。
現状まだまだ書籍点数は十分ではありませんし、新刊の書店電子同時発売も少ないですが、積極的なセールによってこれまで購入しなかった本に手が伸びるようになったこと、ネット著名人が出版した本を即座に購入でき超相性がいいなど、様々なメリットも体感しています。
KindleDirectPublishingもすずきみそ先生や清田いちるさんの「我が名は魔性」などの興味深い取り組みが進んでいるなど今後が楽しみです。
いずれにせよ、これまで電子書籍界隈で悩んでいた「未来の課題」を現実のものとして悩めるようになったのは大きな前進だなぁと思う次第です。

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