「新版 恐竜の飼いかた教えます」恐竜飼育生活を送るために必携の一冊

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ネットサーフィンを楽しんでいたところ、ふと懐かしい「恐竜の飼いかた教えます」を見かけてしまい、これが再版と知って即購入、小学生の頃に感動し、後の人生を変えてしまった一冊について書かずにはいられなくなったので、書こう。
Uncyclopediaが好きで、笑えて仕方ないような人ならば、確実にツボに入る選択肢になるはずだ。

「恐竜の飼いかた教えます」は、愛玩動物として、番竜として、あるいは家畜として、さらには動物園用として、我々人間の友である恐竜たちを紹介し、その飼い方、入手方法を解説している。さらに恐竜を飼うにあたって必要な最低限の道具、一般的な病気と治療法、そして恐竜を入手するための恐竜ショップの紹介など、恐竜を家族の一員として迎えるために必要な知識一式が網羅された必携の入門書である。

「恐竜の飼いかた教えます」は、所謂「生物系三大奇書」、つまり「鼻行類」「並行植物」「アフターマン」などの「極めて精巧な専門書パロディ」の一種である。鼻行類が科学分野の専門書の、並行植物が民俗学術書、アフターマンが子供向け科学図鑑のパロディの体裁を取っているのに対し、本書は「ペット品種図鑑、初めてのペット入門付き」のパロディである。
徹底して科学的パロディと高度なユーモアに満ちているが、根底にあるユーモアに対して最後まで生物学的に真面目な考証を貫くスタンスは、さすが動物学者である著者ならではと言えるだろう。

本書は1986年に出版された旧版と2009年にリニューアルされた新版が存在するが、新版ではイラストを全て写真に変更した他、分類を大幅に刷新するなど大きな変更が施されている。(翻訳者も変更となっている。なお旧版はデイリーポータルZで活躍されているべつやくれいさんのお父上、別役実氏だ)
また各恐竜の説明には飼育する際の注意点がアイコンで示されており、「困るほど間抜け」「困るほど賢い」「子供好き」「子供を食べるのが好き」など、愛すべき彼らの特徴が一目でわかるようになった。
これらの変更により、「特殊な絵本」のように見られていた本書が、「正しくペット専門書」以外の何物にも見えなくなった点は、これから恐竜をペットとして飼育したいと考える人たちにとって素晴らしい改善点と言えるだろう。
(初版から加筆訂正が行われており、その訂正についても一見の価値がある)

本書はその独特なスタンスから比較的著名ではあるのだが、書店では「絵本」として流通していることに対しては苦言を呈しておきたい。「絵本コーナー」に置かれるということはつまり、他様々なジャンルの書籍よりも遥かに長い時間、書棚に置かれるということである。これは良書である本書が書店にいつまでも残り続けるという点では好ましいことであるが、しかし「これを子供に読ませよう」という親の目に触れてしまうことは少々問題だ。
賢明な両親であればさっと中身を見て「子供に読ませるには不向きかも知れない」と判断し書棚に戻すだろうが、一部の「恐竜の本だわ!○○ちゃん喜ぶわ!」と中身も見ずに買い与えてしまう親や、さらに一部の「素直に可愛らしい絵本よりも、ちょっと変な絵本を好む絵本作家である母親」が自分用に購入した場合に、幼い児童が本書を読んでしまう可能性があるのだ。
幼い児童が本書に触れた場合でも多くは「難しそうな本文は読まず、挿絵だけ楽しんで終わる」程度で終わるだろう。だが、少なくない範囲で「お母さん、ボクも恐竜飼いたい、買ってよー買ってよー」と極めて難易度の高いおねだりを始める、また少数事例を挙げると「本書に通底する学術パロディとユーモアに心底魅入られ、その後『マーフィーの法則』やアンブローズ・ビアズ『悪魔の辞典』や『政治的に正しいおとぎ話』などにドハマりし、インターネットで悪質なパロディ文をゲリラ的に公開するメシアネットワーカーに育つ」などの症状が発生してしまう場合がある。何かをこじらせた子供に育つことを望まない良識を持つ大人はくれぐれも気をつけられたい。

さて、無垢な児童にとっては大いに危険な刺激を与える本ではあるが、本書はユーモアを理解したい大人、ユーモアを理解できず自分にとって不可解な笑いをつい「シュール」という万能カテゴリに放り込んでしまいがちな大人、あるいはかねてより理想的なペットを求めており恐竜という選択肢に関心を持っている大人にとっては素晴らしい体験となるだろう。
本書は前述した通り隅から隅まで一貫して英国流ユーモア、あるいは学者ジョークに満ちている。例えば最初の最初からこうだ。「本書の製作にあたって恐竜への危害は一切なかったことを明記しておく。」
そして訳者も完全に理解している「恐竜が6500万年前に絶滅したらしいことは、原著者のマッシュはもちろん、訳者らも知っている。しかし、だからといって恐竜を飼育するという愉悦をあきらめる必要はどこにもない」
このたった2文を見てグッと来た人は、即ネット書店で購入ボタンを押すべきだ。
溢れんばかりのユーモアに笑い、そして読後は「恐竜を!飼いたい!本気でガリミムスを家族に加えたい!」と地団駄を踏むことになるだろう。

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