東京編集キュレーターズ第4回に行って打ちのめされた

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こんにちは、超一流でもプロでもアマでもなく、クズなraf00です。
先日下北沢B&Bで行われた「東京編集キュレーターズ第4回」に行ってきました。

東京編集キュレーターズは、誰もがメディアを持ち編集者になることができるこの時代、様々な発信ができる時代にあって「編集」という哲学・思想が追いついていないのではないかという課題から、第一線のメディア編集者からお話を伺おう、という趣旨のアカデミーです。


このイベントには第2回(NAVERまとめ編集コンペ / 東京編集キュレーターズ )にも参加させていただいているのですが、あれ以来、LINE株式会社執行役員田端さんが提起されるこのイベントの趣旨にはより深く、より実感を伴って同意しています。
また「出版のトップに君臨する超絶敏腕編集者のお話をたった1000円1ドリンク付きでお聞きできる」というやたらとお得すぎるイベントでもあるので参加しないわけにはいかないでしょう。
今回のゲストはコルクの佐渡島庸平氏。「ドラゴン桜」「バガボンド」「働きマン」「宇宙兄弟」などの「世間に影響を与えるほどの超ヒットマンガ」や、伊坂幸太郎「モダンタイムス」平野啓一郎「空白を満たしなさい」などの小説連載も担当した敏腕にもほどがある編集者です。

さて、このイベントの感想を書いていきたいと思うのですが……が。が。

ここで先生、みなさんに残念なお知らせをしなきゃなりません。
花の慶次から次の名言を引用しますね。

「虎は…なにゆえ強いと思う?もともと強いからよ」

どんな話があったかについては、既にブログエントリがいくつか上げられていますのでこちらをご確認いただければと思います。

東京編集キュレーターズ第4回(コルク佐渡島さん)の個人的まとめ : アルカンタラの熱い夏 
プロとアマの境界線を聞きに行ったら「超一流以外はアマ」という区分だったでござる – カイ士伝
「超一流のプロと、アマがいるだけだ」。プロアマ論の難しさ – daialog
「30万部なんて全然知られていません、100万部売れて初めて知られると言える」
「プロとアマの境界線?国内に100人くらいいる超一流、あとは全員アマチュア」
「ウェブで儲けられるか?儲けられます。海外で海賊盤出てもいいじゃないですか、認知されているところからビジネス始められるし」

もうね、ステージが違う。次元が違う。しかも超一流さを身を以て証明している方の言葉であってぐうの音も出ない。

言うなれば「車が誰でも買える時代、その中でより速く走るために必要なことを学びましょう」という会にミハエル・シューマッハーがF1マシンで登場して、「鈴鹿サーキットを毎周1分31秒代のペースで維持すれば勝てるよ!」て言っちゃったみたいな、そんな圧倒的ミスキャスト。
先述したように東京編集キュレーターズは「紙媒体が苦戦しネットが伸びている中で、でもネットに足りないものがあるから伸ばしていこう」というアカデミーなわけですよ。そこに「紙媒体の苦境を吹き飛ばす、むしろ紙媒体の至宝」を連れてきちゃったのがそもそもの誤りだったのかもしれません。「ウェブ時代の編集」について考える上ではあまりにも不向きなイベントになってしまったと言えるでしょう(このあたりは後述)。

しかしじゃあつまらなかったかというとこれはまったくもってノーで、この場で語られた話は極上に面白いものでした。
我々がいかにも素人っぽく妄想するところの「作家と編集者が魂をぶつけ合って作品を作り上げていく図」がそのまま佐渡島さんの仕事術であるので、一つ一つのエピソードがそのまま興味深い。超一流の作家と編集者の目線を理路整然と語られる時間は非常に充実したものでした。

中でも宇宙兄弟の「あのシーンに関するエピソード(オフレコ多し)」などは読者として大興奮で、帰宅後宇宙兄弟を取り出して確認しちゃいましたし、「編集者はイケメン・美人が鏡を見るように作品を作家が確認できるのが編集」という言葉への質問「では少年ジャンプのバクマンで登場した七峰透のように、作家が複数名で自ら確認したら編集はいらなくないか?」に対して「そういう手順も必要だけど作家がそれをやるのは良くないね。それは編集者の仕事で、っていうか僕自身実際いろいろな人に作品を見せてフィードバックを取ってるよ」と答えられるなど、予想を超える回答っぷりに感動しました。

方向性は変わったものの、改めて「この話聞けて1ドリンク付き1000円かよ……とんでもねぇな」と感じるイベントでした。
んで。
今回のイベントは「ウェブの編集アカデミー」としては全く不向きだったのですが、それでもここからいくつか考えていきたいなと思わされたことはあります。

ひとつは「現在のウェブというものが『優れた編集』を取り込むにあたってふさわしい器であるか」ということ。

このイベントの中で佐渡島さんが
「編集者にとって作家との深いコミュニケーションは必須」
「マンガは毎回20ページ程度、それもコマ単位で細かくフィードバックができる。しかし小説はいきなり400ページをドンと渡される。800か所全部に付箋を貼ったらさすがに嫌がられる。だからマンガの方が売れる」
と仰っていて感心したのですが、さてこういう競い合いってウェブの世界でどれだけ行われているのでしょうか、あるいはこの作業にかけるコストをウェブは許容できるのでしょうか?

「紙とウェブ」という媒体の違いについて、これまで紙からウェブの業界に移った人たちは必ず直面してきましたが、彼ら(この中には田端さんや俺なども含まれるので他人事じゃないのですが)がウェブに移り試行錯誤する中で、この領域は結構意図的に削ってきた部分です。書籍編集の感覚に(と言ってもマンガ小説ではなく雑誌の領域での事例ですが)無駄にこだわった結果沈んでしまったウェブ媒体などはネット上に山と見つかるわけで。
「PV至上」と揶揄されるものこの言葉が半分強真実であるウェブにとって「編集によってコンテンツの質を高めていく」という課題にどう向き合っていくべきなのだろう…と感じたりするわけです。

また、イベント中にはてな広報@kiyoheroさんが「プロモーションが編集には必要」という言葉に反応し「編集の職能とプロモータ/マーケターの違いって何だろう?」とコメントされていましたが、この辺り「むしろプレイヤー全員にマーケティング力が求められる世界で日々そのことばっかり考えている」ウェブ側から疑問が出てくるのは自然だなぁと思うところであります。
このテーマは個人的に強く関心を持っているもので、「とはいえ、インターネットが幾分成熟してきて、個人戦で影響力ランキングバトルを続けていくのも消耗が激しすぎる。そろそろチーム戦を考えていくべき」とは思っているものの、やはり実際難しいところはあります。ウェブの世界においては超一流の作家と超一流の編集者がいたら、超一流の作家自身のプロモーション能力のほうが圧倒的に強い。編集者が無名の新人を強く推し出していこうと思った時に、紙であれば「雑誌媒体の力を使って発射する」ことができるが、ウェブにとって「媒体の力」というのはそれほど強力ではない。
などなど考えることは山積しています。

もうひとつ、「プロアマ論」というテーマ設定について。
このプロアマ論の難しさについては先述したdaialogがすげぇいいコト書かれているのですが、これってつくづくウェブでの文脈なんですよね。出版のうちマンガ・小説の領域や音楽業界の「プロ」にぶつけて面白い話が返ってくるテーマではありません。
それとそもそものところで、「プロとアマの差がわかったところでだから何?」っていう。

最後にひとつ。
これは第2回東京編集キュレーターズで発表された、NAVERまとめ編集コンペの受賞作品を見ても思ったのですが、紙の編集が極まれば極まるほど、極まったウェブの方向性とはかけ離れていきますね。
NAVERまとめ編集コンペの優秀賞受賞作は、ウェブのコンテンツとしては全く、これっぽちも面白くない。当然、トラフィックも悲しいくらい出ていない。
一方でこれが雑誌の記事だったとして、受賞作の要素を使って雑誌編集者とライターがちょちょいと手を入れていたなら、これらは間違いなく面白いしきっと感心したでしょう。
逆に編集コンペの最優秀賞に31歳会社員鳴海あつよしさんの「ダンディズムに挑戦したい大人男子へ」が輝いていたとしたら、「えーなんなの、出版業界最強の3人がこんな『ウェブ的に面白い』作品に擦り寄っちゃって、こんな豪華な審査員陣を揃える意味あるの?」と思ったことでしょう。

ウェブと紙どちらも仕事として関わって来ましたが、自分たちで思っている以上に“違いすぎる”。
「編集」について学ぶ上で、「我々ウェブ側に何が欠けていて、何を求めていて、何を出版業界から盗みたいのか」をきちんと把握していくことがまず重要なのでしょう。

今回の東京編集キュレーターズでは佐渡島さんに対し「この人は出版業界の宝すぎる。ウェブにすりよった発言が出て来なかったのはむしろ幸いで、これからも出版で超一流のコンテンツを生み出してほしい」と正直感じました。皮肉でもなんでもなく、そうしてコンテンツが生み出されることこそがウェブ側にとって最大の利益になると感じられるから。
僕らはまだまだ自分自身の理解を進めなければいけませんな。

で、東京編集キュレーターズ、そのうちいつか「出版編集者がモデレーターとなって、メディア野郎田端信太郎氏にウェブの編集について伺う」という図も見てみたいな!と思っています。
次も、行くぞ。

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