2015年F1GP総括 – メルセデス連覇と「つまらないF1」

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言葉もないraf00です。

2015年F1グランプリが終わったのでまとめておきましょう。

■2015年 ドライバーズチャンピオンシップ

パワーユニットの大幅な改定が行われ、メーカーごとの大きな差が生まれた2014年。多くの抜け穴はあったものの、パワーユニットは大幅な開発が制限され、この差が継承されたまま2015年シーズンが始まった。
圧倒的に速くガソリンの利用効率が良くそして軽量なメルセデスに対し、フェラーリとルノーは遅れを取っており、今年からマクラーレンと組んで復活するホンダは事前テストで昨年のルノーを髣髴とさせるトラブルの連発を見せている。
また、深刻な経営難がシーズン開始前に表れた。ケータハムは破産しF1から撤退、マルシャも破産するが投資家により救済され、マノー・マルシャとして参戦した。ロータスの窮状も続き、厳しいスタートを切る。

シーズン開始時点でチャンピオン争いの焦点はメルセデスチームの昨年覇者ルイス・ハミルトン、ニコ・ロズベルグの2人に絞られた。
が、開幕からハミルトンが怒涛の連続優勝を決め、一気にポイントを引き離す。中盤戦でロズベルグが盛り返すも着実にポイントを積み重ね、ハミルトンがシーズンを連覇。終盤チャンピオンシップの大勢が決しプレッシャーから開放されたロズベルグが6連続PP、3連勝を記録するが全てが遅すぎた。終わってみればメルセデスは全19戦中PP18回、優勝16回、1-2フィニッシュ12回と、昨年同様の完全制覇を達成している。

メルセデス以外のチームも、昨年ほどの波乱は見られなかった。
ドライバーズランキングを見れば一目瞭然で、3-4位にフェラーリ、5-6位にウィリアムズ、7-8位レッドブル、9-10位フォース・インディア。
ドライバーの差以上にチームの差が大きかったことがわかる。
また、マクラーレンホンダはシーズンに入ってからもまともに走行距離を稼げないほどの惨状で、シーズン中の開発が難しい状況ではなす術なし。
昨年はメルセデス1強ではあったが、2位以下はそれなりに混戦模様で楽しみはあった。今年はなかった。「面白くないF1」は1年を通じて問題になり続けた。

■今シーズンの事件

・ジュール・ビアンキの死去

2014年の日本グランプリで事故に遭い、意識不明が続いていたジュール・ビアンキが7月17日に死去。レースでの事故による死亡事故としては1995年のアイルトン・セナ、ローランド・ラッツェンバーガー以来の悲劇となった。
このニュースにより、F1の安全性向上に関する議論が活発になっている。
2013年にマリア・デ・ヴィロタが死去した要因も頭部へのダメージであったことから、頭部が剥き出しになっているF1マシンの形状に関する提案が頻出、F1にキャノピー(天蓋)を付けるべきかというこれまでにない提案も見られている。

・レッドブルのエンジン騒動

シーズン後半、メルセデスに対して大きくパワーの劣るルノーパワーユニットを搭載するレッドブルは、公然とルノーを批判するようになった。ルノー側も「4連覇した時はエンジンを褒めることなく、負け出すとエンジンを批判する」と不快感を表明。レッドブルはルノーに対して絶縁を宣言する。彼らはまずメルセデスに対して「1年落ちではない最新のパワーユニット」を求めるが断られ、フェラーリに対しても同様の条件を求めるが門前払いを食らう。レースを上位で戦うための選択肢が断たれたレッドブルは2016年シーズンに搭載するパワーユニットがなくなってしまうという窮状に自ら陥る。この間、撤退を示唆してF1運営側に脅しをかけるもエクレストンから「16年での撤退の場合巨額の違約金を支払う必要がある」と一蹴されている。もはや選択肢のなくなったレッドブルはホンダに対して交渉を持ちかけるも、ホンダパワーユニットはマクラーレンとの固い提携により作られたもので、ロン・デニスの許可がなければ話は続けられない。ロンは当然のようにこれを拒否。
完全に来季の選択肢を失ったレッドブルだが、最終的にルノーのパワーユニットを「タグホイヤー」名義で利用することで決着した。

この騒動は不用意に強硬な姿勢を見せたレッドブルの自爆事件ではあるが、しかし現在のF1が「ワークスチームしかチャンピオン争いをする権利がない」ことを明らかにもしている。
最新のパワーユニットはメルセデス、フェラーリ、そして2016年にロータスを買収しチームとして復活するルノー、そしてマクラーレンホンダだけが利用でき、他チームは1年落ちのモデルしか利用できないということが事実上公言されたことになるからだ。
この問題に対してはF1評議会がFIAジャントッドとエクレストンに対して解決の判断を委任しており、2017年シーズンに向けての課題となりそうだ。

・F1つまらない問題

2010年代になってから世界的に話題が増えている「F1が面白くなくなった」という議論は、2015年シーズンで深刻なレベルで叫ばれるようになった。この問題には様々な論点が絡み合っている

・メルセデスの独走(その前にはレッドブルの4連覇があった)
・メルセデス独走の中、内紛を避けるための直接バトルの抑制
・ハイブリッドエンジンへの移行によりエンジン音が少なくなった
・ピット戦略の面白みの低下(昨年に比べ1レースのピット回数減少)
・開発制限とテスト制限が過酷すぎ、1年を通じた開発競争が少ない
・もっさりしたコーナーリングで迫力がない
・遅い。GP2やスーパーフォーミュラなどの旧F3000カテゴリと大差がない
・燃費走行を強いられ、ドライバーの限界が全く出し切れていない
・過度な若年化により下位カテゴリの構造が破綻している
・DRS/ERSで追い抜きは増えたがオーバーテイクが単純化している

単純に勢力図の問題だけでなく、現在のF1が進む方向性や、技術が人間の限界を超えてしまっている現代のの根本的なモータースポーツの在り方に関する問題も存在する。
この「つまらないF1」は深刻な問題として、GPDAが直接WEBを通じて世界中のファンに対して改善のアンケートを募るなどのアクションにつながっている。

■今年の一語

「退屈」。
2014年シーズンも退屈な展開が多かったが、2015年はタイヤのライフが改善しほとんどのレースが1ストップで走り切れるようになってしまったこと、各チームの戦略が最適化され、ドライバーごとの特性がレースに反映されなくなるなど、パターン化が一層強化された。
また、開発凍結とテスト抑制で新技術の投入が遅くなった結果としてトラブル率が低下、波乱が起こりにくくなっており、予選結果でレース内容が予想可能なものになってしまっている。
「コースをぐるぐる回っているだけなのに何が面白いの?」という言葉は、F1の魅力を理解しない人がF1ファンに投げかけがちなものであり、F1ファンはこれに多くの反論を持っていたものだった。が、2015年シーズンはF1ファン自身、さらには競技者たちがこの言葉を投げかけてしまうほどのものだった。

■1位 メルセデス (総獲得ポイント703)

16勝。1-2フィニッシュ12回。
昨年に続き過去最大の制覇率を達成した。
強烈な速さと低燃費性を備えたメルセデスエンジンのメリットをフルに活かし、予選ではタイヤをセーブして決勝に残し、決勝では燃料に余裕を残しながら安全な走りに徹した。やや本気に近い走りをしたオーストラリアでは3位ベッテルに30秒以上の差をつけるなど、いくつかのレースを除き、見た目以上の余裕を持つ別次元のマシンだった。
この体制で昨年以上に円熟したハミルトンが序盤で大差をつけて逃げ切り、ロズベルグはチャンピオン決定後に3連勝を達成した。

今年のシーズンが面白くなかった点として、メルセデスが内紛を嫌い、直接のバトルを徹底的に避けたところは強調しておく必要がある。チームとして万全だったが、それなしでも両タイトルの獲得は間違いなく、最終戦でもチャレンジを回避させた点は批判されるべきだろう。

■2位 フェラーリ (総獲得ポイント428)

3勝。
昨年コンストラクターズ4位に沈んだフェラーリはチーム体制を一新、ドライバーにベッテルを迎え、打倒メルセデスのため一丸となって2015年を迎えた。昨年の人事刷新により開発の不安が報じられたが、メルセデスを除けば最も速く、一貫性を持ったマシンに仕上がっている。
移籍したベッテルは昨年までのアロンソのようにフェラーリが発揮できるパフォーマンスの100%を出し切り、3勝を含む19戦中13回の表彰台を獲得、コース上ではメルセデスにほぼ太刀打ちできないものの、チャンピオンシップのポイントではメルセデスの2台にしつこく食い下がる好走を見せた。
ライコネンは昨年よりも好みのマシンに仕上がっていたものの、予選で思うようなパフォーマンスが出せずにグリッド後方からのスタートをし、他車との接触が目立つなど本来の速さを発揮できず、昨年に続き不運な年を過ごした(同僚とのポイント差は昨年よりは縮まったが、それでも128点差は全ドライバー中ワースト)。
調子を取り戻した要因は、「チームが一丸となったこと」。フェラーリ名物の内紛やチーム内の政治的な動きが一切なく、メルセデスを追うことだけに集中できていると、ドライバー・チーム共に語っている。
2016年も同じ体制で臨むが、このチーム体制であればさらに差を縮めてくるだろう。ドライバーのラインナップも(つまりライコネンの継続も)全チームを見渡せば全く問題がない。

■3位 ウィリアムズ (総獲得ポイント261)

メルセデスエンジンを持ち、確実な速さを持っているが、今年もポイントの取りこぼしが多く見られた。
コースによって好不調の波が激しく、予選結果もばらつきが多いが、好走したレースはフェラーリ以上によく走り、4回の表彰台を獲得できている。完走扱いにならなかったレースも両ドライバー合わせて5回と少ないが、致命傷にならなかった接触やミスの数は多い。
シーズンの印象ではボッタスが活躍したように見えるが、ポイント差は15点と少なく競り合っているなど、地道な蓄積が実ったことがわかる。

■4位 レッドブル (総獲得ポイント187)

昨年に続きルノーエンジンに泣かされ、マシン自体もトロ・ロッソに追われるなど状況は厳しい。
昨年活躍したリカルドと、トロ・ロッソからクビアトがステップアップし新鮮なタッグになり、ポイント差3点とよく競り合ったが、昨年のような「後半の盛り返し」はなく、チームの獲得ポイントは昨年の半分以下。レースではむしろトロ・ロッソの新人たちの方が目立つことも多かった。
そのレッドブルは後半、不名誉な形で話題の主役に躍り出る。前述した来季エンジン騒動だ。次の選択肢を確保する前にルノーの批判を始め、メルセデスやフェラーリに対してまるで恫喝のような態度で最新エンジンの提供を迫る、ホンダに対しては最初の段階で軽く罵倒しながら後から泣きつくなど、厳しい立場ながら周囲からの同情が一切得られない無様な姿を見せており、このエピソードは後年まで語り継がれそうだ。

■5位 フォース・インディア (総獲得ポイント136)

昨年同様、中堅の中でも光ったフォース・インディア。
かつてのクラッシャーであるペレスはリタイヤを1回に抑え、表彰台を獲得。ヒュルケンベルグは数多くの接触を重ねている。
それなりの速さはあるのだが、最もバトルの熾烈な位置に付けることが多く、レース後半になると微妙な位置に落ちてしまうことが多い。
資金難が毎年報じられるが、着実に実績を積み上げていることで買収話に事欠かず、シーズン中にはルノーの買収話が、シーズン後はアストン・マーチンとの提携が報じられている。

■6位 ロータス (総獲得ポイント75)

数年続いたロータスの財政難は、2015年に至って完全に行き詰った。
交換するパーツもなく、機材の差し押さえに遭い、移動も遅れ、モーターホームが用意できずに野外で過ごすなど、シーズン後半はレースに参加することで精一杯だった。シーズン最終段階で正式にルノーにチームが売却されることが確定。来年からはルノーブランドで「メルセデスチームと同規模の予算」で運営されるといわれている。
財政的には極めて厳しい一年だったが、メルセデスエンジンに変更したことで、レースでは昨年よりも活躍。予選Q3にもたびたび進出し、財政状況とは裏腹な速さを見せ、ベルギーでは3位表彰台も獲得している。
昨年に続きグロージャンが活躍。かつてのクラッシュキングは堅実な走りをするドライバーに成熟し、多くのポイントをチームにもたらしている。一方マルドナドは数々の接触を起こし、他ドライバーから恐れられた。

■7位 トロ・ロッソ (総獲得ポイント66)

シーズン前は若干17歳のマックス・フェルスタッペンを起用したことが話題になった。
F1デビューの低年齢化がかねてから問題視されていたが、17歳という運転免許取得前のドライバーにスーパーライセンスを発行すべきかを巡って多くの議論が巻き起こった。結果以後は最低年齢の基準を設けることとなったがフェルスタッペンのデビューは確定。
(ただし、フェルスタッペン自身はF3でのランキング3位、マスターズで優勝、マカオGPにも出場するなど近年のF1ドライバーの中ではきちんとステップを踏んでいる部類であり、むしろライコネンなどの飛び級組の方が発行の是非を問われるべきだと思うのだが)
同僚はラリーチャンピオンであるカルロス・サインツの息子と、2代目ドライバーのコンビとなった。
若すぎる2人の体制であったが、シーズン開幕後は親チームレッドブルよりも勢いを見せるシーンを続発、フェルスタッペンはハンガリーGPとアメリカGPで4位という好成績を記録し、今年のベスト新人ドライバーとして評価されている。

シーズン後半、親チームレッドブルがルノーと決別宣言をしたことでルノーエンジンを失うことになるが、レッドブルが提携先探しに苦労する中、かつて利用していたフェラーリとの契約をあっさり決めている。
来年もチーム力は低いままだろうが、今年躍進したフェラーリエンジンを搭載することで(1年落ちでも)、ルノーを継続するレッドブルを上回ってしまう可能性が低くない。

■8位 ザウバー (総獲得ポイント36)

すっかり地味な存在が定着したザウバーは、今年もエリクソン・ナッセという完全ペイドライバー体制でスタートする。
フェラーリエンジンの改善により、昨年無縁だったポイント争いに復帰することができ、主にナッセが好走。デビュー初戦のオーストラリアでいきなりの5位入賞を獲得し、その後もポイントを重ねた。
エリクソンもオーストラリアで8位を獲得し、その後も9位10位を4回記録するなど、粘りを見せた。
依然として「レースに残り続けるため」だけの状況が続いており、改善の目が見えない。

■9位 マクラーレン (総獲得ポイント27)

2013年にホンダがマクラーレンと組んでF1に戻ってくることが報じられ、2014年いっぱいをかけてパワーユニットを開発、かつて黄金時代を築いた「マクラーレン・ホンダ」が復活した。
マクラーレン・ホンダといえば、16戦15勝を飾り4度のワールドチャンピオンを獲得した名コンビ。そのホンダが開発凍結にある他エンジンをよそに2015年用のパワーユニットを開発しているのだから、他チームとしても心中穏やかではなかった。
さらにフェラーリからアロンソが移籍。安定感のあるバトンとのコンビで、体制は盤石だった。

しかしシーズン前テストが始まると、全く走れない。走行距離を稼いでデータを溜めることができない。さらに遅い。
シーズン開始直前にホンダ本社などで大々的に復活のイベントを開催してはいるが、期待できないどころの騒ぎではない。
不調はシーズンが始まってからも続く。ゴールまでマシンを走らせられない。セッティングを煮詰めるレベルですらない。トップから4秒劣るマシンは「GP2のようだ」「追い抜かれるスピード差がありすぎて怖い」などのドライバーの悲鳴が上げられるほど。
エンジンやパーツが故障しすぎ、ペナルティの蓄積によって2人で100位の予選順位降格といった桁違いの記録も達成してしまう。
終わってみればコンストラクター順位はマルシャの上の9位。マクラーレン史上最も悲惨なシーズンになった。
結果、数々のスポンサーの離脱を招き、磐石だった資金体制に陰りを見せている。

昨年メルセデスエンジンを搭載しながら中段に沈んだようにシャシーも良いとはいえないものだったが、レースを戦うレベルに達しないホンダエンジンの責任は大きく、経験のある技術者を招くことをせず体制を変えなかったホンダの責任は大きい。
しかし考えてみれば第三期ホンダの惨状を見れば、「パワード・バイ・ホンダ」に過剰な期待が寄せられていたのは間違いのないところだろう。

■10位 マノー・マルシャ (総獲得ポイント0)

昨年シーズン残り3戦で破産申請しレースを欠場したマルシャだが、投資家からの援助を受けて奇跡的に復活。
ドライバー・マシン・設備を取り戻し開幕戦に姿を表すが、マシンを始動するソフトが全て削除されており、エンジンを始動させられず欠場。第2戦でも107%ルールに抵触し特例での決勝出場が許されるもスティーブンスが出走しないなど、「参戦するつもりはなく前年度の賞金が欲しいだけではないか?」と疑われるスタートを切った。
その後はなんとか107%内で予選を通過、シーズン最終戦まで「周回遅れの動く壁」として1年を過ごしている。
しかし、2016年はメルセデスのパワーユニットの搭載が決定。さらにウィリアムズからトランスミッションとサスペンションの提供を受けた新シャシーの投入が決まっており、大幅なステップアップが期待される。

■個人的振り返り

運営側が、競技者が、F1ファンが、そしてランキングのトップを走るドライバーすらが「F1はつまらない」と嘆く、酷い1年でした。
F1を見始めて24年。個人的にもこれまで「極力リアルタイムで視聴し、見れない場合でも月曜日までに必ず予選・決勝までを見る」という生活を1戦たりとも欠かしたことがなかったのですが、ついに今年「予選は録画しておくだけで見なくていいや」とパスすることになってしまいました。
F1という競技を巡る様々なニュースは変わらないペースでチェックし続けていますが、「レースが行われる土日が一番つまらない」というのは尋常ではありません。
現在2017年の改善に向けてFIAとエクレストンが全力を注いでいますが、これに期待しながら来年を乗り切りたいと思っています。

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